第13話
「なんだって」と久山が顰めた顔で言う。
「そうなんですよ」
私たちは幾らか離れた場所にある
大衆居酒屋にやってきた。
そこで、私たちの今後について
相談していたのである。
私たちというのは私と彼女のことである。
別れを決意していた。そんな日々もあった。
「そりゃおめえ、
彼女は労わんないとダメだわ」
私はジョッキを握りしめ、ごくりと一口。
「男も男だが、女も女だ。
喜ばせてやれてるか?」
私の沈黙に釘を刺すように、久山は言う。
「ほら、即答しなきゃ、
女は幸せにできねえよ」
私は言い返すように言った。
「かくいう久山さんはどうなんですか」
「俺はまあ、まあまあだよ」
「まあまあ?」
「週一か週ニで出掛けてる。
そんくらいしかできねえからな。
最後にでかけたのはいつだ?」
思えばいつだったのか。
そんなことを考えてしまった。
あれだ、1ヶ月前だ」
「そりゃダメだ、
うちのカミさんならでてっちまう」
彼は一口ビールを啜ったところで、
こんなことを言った。
「織本くん、子供ができたらなんて
名前をつける」
彼は非常に真面目な表情でいた。
「ひろき」
久山は驚いた表情で、
なぜ?なぜひろき?と問うた。
「自分でも分からないけど、
以前そんな話をしました」
久山はジョッキを置いて、
「じゃあそのひろきも大事にしないとな」
と言った。
「あと、織本くん、その速度で生きちゃ、
すぐに死んじまう、だから彼女を守るんだぞ」
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