第5話
「まずは、このボール」
と鵠沼は言った。
私たちは階段を降りて
外の芝生の生えた広場に来た。
彼は白いボールを右手に持っている。
私は気付けば左目にグローブをつけている。
「このあたりに手を置いておいて」
と彼は私に真似をさせる。
ゆっくりとその位置へ持っていった。
「このボール、ソフトだから安心してね」
と彼は一言添える。
せーの、と言って曲線を描くボール。
私はそのままの位置で保つ。
それはすぐに私の手の中に収まった。
やはりそれに気づくのは23秒後、
いつの間にか左手に重みを感じる。
「あ、ボールだ」
鵠沼はフォームを作り、ボールを投げる。
しかしながら気付けばボールが
手の中にあるという感覚。
あまりにも不思議な感覚であって
自分でもよく分からない。
「こんな風に、こうなるって決めて仕舞えば、大体のことは予測できる」
はあ、と答える私の上を
飛行機が通った気がした。
途端に空に飛行機雲が描かれる。
時間のずれがとにかく辻褄が合わない。
「そうやって慣れていこう」
私は納得がいかないものの、
少しずつそれに慣れようと思った。
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