第2話
勤勉に、勤勉に働いていた。
来る日も来る日も熱心に働き続けていた。
如何にも早く、どうにか早く、
仕事を終わらせる方法を探っていた。
仕事が嫌なわけではないが、
来る日も翌る日も熱心に働いていた。
効率化重視、私は仕事ができる人間だ。
そう思いながら励む日々。
それがいつからか全く逆になってしまった。
いやむしろ、遅すぎるようになってしまった。
そうなってしまった原因についての話をする。
原因というか、宿命のことについて。
事実、私は時間の概念を捨てた存在になった。
「織本くん、今日も早かったね」
と久山が右肩をポンと叩く。
「いやいや久山さん、自分は何も」
会社の出張でだいぶ離れた街へ来た。
歓楽街を越え、アーケードをひしひしと歩く。
がらがらとキャリーケースを引く音がする。
「あ、あれだ」と久山は指をさした。
目の前にあるのは63階建のホテル。
会社の融通がきいて、
高いホテルに泊まれることになった。
「荷物置いたら、呑みに行こう」
そうして久山から順に
リボルビングドアを抜ける。
チェックインを済ませ、
ホテルマンが2人がつき、
それぞれのキャリケースを運ぶ。
31.30...と順々にエレベーターが下降していく。
「そうだな、串物でも食べる?」
無言の空白を埋めるように久山は言う。
いいですね、と言いしばらくして
エレベーターが到着した。
ホテルマンがどうぞ、と開いた扉を押さえる。
私たちは会釈をしながら乗り込む。
2人のホテルマンがキャリーケースを
持ちながら入り込んだ途端、
扉が閉まり、エレベーターは音もなく
静かに上へ向かう。
煌びやかな作りになっており、
いかにも高級ホテル、
というような作りになっている。
一分もしないうちにエレベーターは
私たちの部屋の階へと到着した。
扉が開き、部屋についた。
こちらの部屋と案内され、
ありがとうございますと告げると、
ごゆっくりとお過ごしくださいと頭を下げ、
ホテルマンは去っていった。
「じゃあ十分後、エレベーターの前で」
と久山が言い。分かりました、と言う。
身支度をして、
少し早めにエレベーターに到着した。
「お、お待たせ」と上着を脱いだ久山がやってきたところでボタンを下降ボタンを押す。
「いやお腹すいたね」と久山は言う。
「もしかして奢りですか?」
と冗談を言い、笑った。
「最近羽振りがいいからよ」と言ったので、「お願いしますね」と頼み込んだ。
ドアがゆっくりと開き、
再び豪華絢爛なエレベーターへ。
到着したエレベーターに乗り、
ゆっくりと扉が閉まっていく。
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