第12話 012
「まっあれだ腹減ったよな?」
教会を後にしたアルトの第一声はこれだった。朝飯さえ食べていない僕は、大きくうなずく。
「このメンバーでのダンジョン初踏破記念として豪華に行くか?」
「宿の向かいにレストランがありましたよ。そちらなんていかがですか?」
提案したユイを先頭に目的地に向かって歩き出す。着いた先は立派なレストランで自腹なら遠慮したい感じだ。
「ここか?なかなかいい雰囲気だな。」
「そうでしょう?」
アルトは値段すら確認せずに1人でドアにい込まれるように消え、僕とユイは取り残されたというよりユイは、僕が入るのを待っているようだ。
「どうしたのです?早く入りましょう」
ユイは軽く僕の背中を軽く押して押した。僕は「勘違いしちゃうぞ!」と思いながら覚悟を決め進んだ。一見、豪華そうなレストランのイメージだったが中から見ると普通の大衆向けの飯屋だろう感じに思える、きっとこれは僕の地球にいた時のイメージで勝手にそう思っていたのだろうか?
すでに飲んでる人もいてあちらこちらで、大きな笑い声が聞こえる。なんか映画の中に入った感じでちょっと楽しい。「おーい、こっちこっち」と、すでに席についていたアルトに呼ばれ。席に付くとアルトはメニューらしきものをユイに渡す。
「お任せで!」
どうやら、僕に今日の夕食を決める権利がない事が分かった。ユイがアルトから渡されたメニューを閉じると店員がやってきて注文が始まった。当然僕は黙って椅子に座るだけだ。
ユイの注文が終り店員が去るとアルトが聞けと言わんばかりに机にバンっと両手を乗せた。
「ユイは、向かいの宿を取っているのか?」
「はい。明後日までの宿泊予定ですよ」
「よし、メシの後は宿に荷物を置いて各自自由だ。そして明日は、草原のダンジョンを目指す。」
「ふふ、では、さっそくリョウタさんの剣の練習ですね。お兄様は、どうされるのですか?」
「俺は情報集めだな」
「・・・ふーん。そうですか?」
いつもお兄様とべったりな感じだと思っていたユイが急に冷たくなったところを見ると情報収集というのはきっと酒場なのだろう。何一つ選択権のなさそうな僕は来る料理を楽しみに待つだけだ。
しばらくの雑談ののちテーブルに料理が運ばれてきた。よく考えたらこの世界に来てから食べる本格的な料理だ。見た目だけで言うと僕とアルトは、牛肉っぽいステーキ、ユイはよくわからない白身魚のムニエルのように見える。そして中央には、パケットに入ったパンが置かれた。ギルドハウスの食堂とは比べ物にならないおいしいだろうというのが匂いだけで分かった。
「いただきます。」
そういって僕は手を合わせた。
「どうされました?」
僕が手を合わせるのを見たユイが、不思議そうにこちらを見ていた。しまった。なんといえばいいだろう・・・当然黙るしかない。僕の奇行にアルトも気になってしまったようだ。
「リョウタはどこの国から来たんだ?」
「すこし遠い国です。」
「おいおい。仲間だろ。教えてくれたっていいじゃんかよ」
そんな感じで根掘り葉掘り聞かれステーキの味が消えそうだったが、なんとか適当にごまかしながら食事を終わらせた。ちなみに今回の飯代はすべてアルトが払ってくれたのだがどう考えても今回の冒険では赤字だと思う。
レストランを出た僕たちは、ユイの宿に来ていた。宿は思ったより広く大きな窓にベットが2つ、1人が寝泊りのために借りるには広すぎる感じがするくらいだ。持っていたアルトとユイの荷物を置き。椅子に座った。
アルトはパンっと手を叩いた
「よし解散だ。俺は風呂だ。3の太陽が出るまでガキは外で遊んで来い。」
「ではいきましょうか。」
ちょっと不機嫌そうに言ったユイと練習用の松明をもって部屋を出た。
「ユイさん、どこにいくのですか?」
「まずこの町の碑石によってもよろしいでしょうか?」
ユイはアルトの行方を捜すために、宿の確保の後に真っすぐ教会に来たということだ。そこで今入っていると聞いて追ってきた僕を伸したと・・・。
・・・
公園で碑石を触った後は、公園内をあるき丁度よいスペースを見つけると僕の訓練が始まった。僕の師匠となったユイに教えられながら松明を構えて振った。「手だけで振ってもダメですよ。体重を載せないといけません。」そういって何度も僕の振り方にダメだしされた。
「剣というものは包丁の切るとは違います。力任せに叩き切るのです。相手の体制を崩し、すきを生み出し、そこへ渾身の一撃を叩きこむ。そこに必殺技なんてものはいりません。いえ真の剣士ならすべてが必殺となるでしょう。」
なんだかよくわからなかったが、とりあえず脳筋剣士ユイと呼ぼうと思う。そのあとは「魔物との戦いで剣を使うなら体力も必須です。」といわれて走ったり筋トレをさせられた。
・・・
「今日はこのくらいで終わりにして差し上げましょう!明日からはどんどん訓練の内容を濃くするので楽しみにしていてくださいね。」
結局3の太陽が顔を出すまで松明を振らされた。もう僕の手が松明の棒の様だ。異世界転生って言ったらチートだろ・・・楽して強くなりたい!!そう思った僕の足取りは重かった。
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