1章~ラグレシア~

002-Ⅰ森の中

 夢でお告げでも見たような感覚と共に前世の記憶と調停者メシスタであることを思い出したが安心できる状態じゃない

記憶が戻ったと言う事は5歳の誕生日を迎えたはずで僕としては記憶が戻るときは家族にでも囲まれていると思っていたのに真夜中と推測できる程真っ暗で鬱蒼とした草の上で僕は寝転がっていたのだが……

ラノベとかゲームで何かを思い出すときは大体生死を彷徨っていて目が覚めたらって言うテンプレがあるが僕は瀕死なのか?

いや記憶が戻って早々ピンチではあるかもしれない。


「メル……???」


「ソウ様おはようございますお目覚めをお待ちしておりましたよ」


「ここはラグレシアなのか?5歳の誕生日で記憶が戻る仕様なはずなのに僕は何故こんなにも鬱蒼とした森の中にいるんだ???」


「ソウ様…とても申し上げにくいのですがソウ様はまだ5歳を迎えておりません先ほどラグレシアで産みの親となる夫婦がこの森に捨てて行ったと言いますか……」


なんと、僕は転生早々捨て子になったようだ実際は3歳だそうで捨てられ死んでしまう可能性が出てきたから早めに記憶が戻ったのだそうだ。

顔も知らない親に心底腹が立つがこの状況を何とかしないといけないだろう。

状況の整理をするには真夜中で暗すぎるからどこか暖の取れるような場所は近くにないだろうか…前世でサバイバルをしたことなどないがこんな状況に慣れているかのように淡々とすべきことが思いつく自分に驚いた。


「ソウ様近くに建物らしきものがございます」


「どこだ?マップスキルとかあればいいのに……」


「マップスキルはございませんがわたくしメルの日記には世界地図オートマッピングのサブスキルが織り込まれております。使用なさいますか?」


メルからの問と同時に“Yes”と“No”と書かれたウィンドウが現れ僕はもちろんYesを選択した。

意識をすれば視界の左側に出てくるようになった。


“日記のレベルが3に上がりました―――”


「メルこの前から気になっていたけどこの日記のレベル機能は何」


「スキルには使用度や熟練度によってレベルが上がります」


「六感強化を使用」


“使用条件を満たしておりません―――”


どうもスキルは獲得したら使えるわけじゃならしい……

使用条件ってなんだよ!!


「六感強化Ⅱのスキル使用条件は―――です」


「メル?肝心なところ教えてくれないと分からないんだけど?」


「申し訳ありませんソウ様の分析力不足により世界からの情報抽出に失敗いたしました」


分析力を上げるには一定数この世界の事を知らないといけないらしいが3歳児で経った今両親に森で捨てられた様な奴が出来るわけないだろーーーーーー!!


「まぁ、メル使用条件が分からなくてもたまたま条件を満たすこともあるだろ?」


「その通りでございます獲得していないスキルでも使用条件、獲得条件を満たせば取得成功とみなされます」


自分の努力次第で何とかなるとは言え3歳児にはまず食料調達とかそう言う衣食住の確保が不可能に近い…

この森にある物がどの草木に毒があるのかさえ分からない…食べてみたら猛毒‼なんてこともあるわけだ2回目の人生あっけなく終了だなんて最悪すぎるだろ

とりあえず目の前の草に手を伸ばしてみる―――


「ソウ様こちら口にすると―――になりますよ」


「なんだって??何が起こるのか結局わからないのか…まぁ食べないほうがいいって事だよなメル毒草かどうかの判断はできるのか」


「はい、可能でございます1メートル四方の草木の毒物検知を開始しますか?」


もちろんYesだ。

このメルの日記ってスキル序盤ポンコツスキルなんじゃないかと思うところだった。


“……”


なんだかメルが不満でもあるかの様な音を漏らしたがスキルに人間性があるわけないので気のせいだ。

“【薬草採取Ⅰ】を獲得しました―――”

そこら辺に生えているこの草薬草だったのか


  【薬草採取Ⅰ】

 薬草とそれ以外の判別が可能

 低級の薬草の用途が分かる

 採取速度UP小


早速薬草採取Ⅰを使用してみると毒草を除けば1キロメートル圏内すべてが薬草の群生地だった事が発覚した。

低級の薬草ではないらしく使用用途が分からないのがとても残念だ…


「メルでもこれなんの薬草か分からないの?」


「中級魔物除けポーションの素材になります千切って持っているだけでも低級魔物除けポーションの効果があります」


この世界は魔物が居る世界であることを今知ったけどそんな事実はおいておいて魔物除けになる薬草の群生地に捨てられたのは不幸中の幸いだった。

とりあえず千切った物を腰に巻いておいたが一気に野性味が出て3歳児とは思えない風貌になってしまった。

メルがさっき言っていた建物の方角に僕は足を進めながら薬草を集めることにした。

魔物除けの薬草を食べてもこれはかなり苦いらしい流石に口にしたくない……

道中なにか食べるものも見つけたいお腹がすき過ぎてどうにかなりそうだ捨てるなら食べる物くらい寄こしてくれよと思うがこの年齢で捨てる時点で僕を殺そうとしていたんだろうし……

不思議なことに記憶が戻ったと同時にこの身体の今までの記憶が抜け落ちているせいで両親の顔もどんな環境で生きてきたのかも分からない。


「僕としてはかなり歩いたと思うんだけど後どれくらいで着くの?」


「1時間ほど経過致しましたが……ソウ様が薬草採取捗っていた“せいで”まだ500メートルも進んでおりませんソウ様のお身体はまだ栄養が必要な歳ですので早めに辿り着くのが賢明かと思われます」


「え!?500メートル!?」


“……”


「はい、500メートルでございますそもそも持てない量の薬草を取ってますよ」


メルは呆れたとでも言いたげだ。

持てない薬草は置いておいてただでさえ鬱蒼としていて昼でも薄暗い森の中で3歳の身体で野宿をするわけにはいかないと言うのに前世と歩幅も違うことを忘れていた……

先を急いでいる道中僕は如何に3歳の身体は弱くて体力がないと言うことをメルから事細かに言われた。


「ほんとごめんって前世の感覚と違いすぎるんだよ分かった次から気をつけるから今はここら辺に何か食べられるもので栄養のある物はないの??」


「あるにはありますが今のソウ様では単独討伐が出来ないので食べられません」


「それは…無いと同じなんじゃ…」


「ですから早々に建物に向かってくださいと…」


「建物に向かっても人が居なかったら意味ないんじゃないのか??」


「種族的に人ではありませんが気配はしております」


「人じゃないなら食い殺されたりなんかしないのか??」

流石に助けを求めたら食料にされるのは嫌なんだが


「この世界には人語を話す種族が複数おりまして基本的に魔族を除いて人間と好意的な種族ばかりです」


そんなに複数の種族がいるなら全種族と話してみたいな

「……そう思うのでしたら早く建物にたどり着かないと餓死するだけですよ」


「本当に…すみません…」


謝らずに足を動かす!とメルに𠮟責を受けながら先を急いで建物に向かったが3歳のこの身体は栄養の消費も早く早々に空腹に悩まされて建物が見えたところで力尽きたせいで後はあまり思い出せない。


“………は…何だと⁉……s……”


“そう…か……こ…………だな”


目が開けられない程の空腹と戦っている時に聞こえた会話の様な物があった気がする


“ソウ様今は安心してお眠りください”


そうかありがとうメル。

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