第9話

風呂は俺にとって、安らぎの場所であったのに疲れるなんて。


大事なパーソナルスペースを無くしてしまった悲壮感で嫌になる。


だが、思う。元世の母が死ぬまでの期間は一年だ。それを過ぎれば、家を出るなりすればいい。生きてさえいてくれたら話し合いで分かり合える未来もあるだろう。今は俺にこの世界の常識がないのだからこそ、家族一緒にいるべきだ。一年だ。一年なんて、あっという間に過ぎるさ。


そう考えるなら、姉さんとの関係修復だな。夕飯の時も俺との会話は無し。目も合わせない。どうしたらいい。今のところ強烈な母のせいで、姉になにか思うことはないだろう。脅えてる人にアプローチを重ねても駄目だろう。母と楓さんに良いアドバイスは期待できそうもない。時間が解決してくれるのを待つしかないのか。


タバコ吸って寝るか。母さんの部屋ってどこだ。わからなかったから自分の部屋で寝た。これでいこう。あぁ、ベットが広い。寝転び放題だ。寝具もいいものなんだろうな。


「たかちゃん。母さんと寝るって言ってあったでしょう。来なさい」


拉致られた。しかし、その恰好。なんでスケスケベビードールなの。しかもノーブラ。痛い人なの。


「私の部屋はここよ」シンプルで必要な物しか置いてない。そんな部屋だった。ベットの大きさだけが違和感を感じるほど。


なんで、こんなにベットが大きいのと聞いてみたい。でも、聞けば母がイカれた人と再認識しそうで聞けない。だまって横になる。この部屋で母だけが上機嫌だ。辛い。イカれ認定が上機嫌。怖い。


「たかちゃんと一緒に寝れるなんて幸せだわぁ。そうだ、昔を思い出して、授乳プレイする。キャー恥ずかしい」


「しないよ。疲れたから寝るの」


「え~秋の夜は長いのよ」「寝るの」「もう」


「たかちゃんが私で男になったって考え深いわね」「もう忘れていいから」


「今まで守られるだけの存在が夢と希望を与えるのよ。凄いじゃない」


俺の顔はちぎって食べれないよ。


「これから何人の女を泣かせるのかしら。あっ泣くって涙じゃなくてよがる方ね」


そんな説明いらないから。


「本当は幸子がいるから人工授精は考えてなかったの。でもね、なんか男の子が授かりそうな気がしたのよ。男の子は人類の宝だもの。その直感を信じてたかちゃんが生まれたのよ。もう嬉しくって。だって、おち〇ちんが成長していくのを見守れるのよ。私がが生んで、男にした。最高ハッピーでしょう」


いい話で終わらせろよ。


「母さんは幸せなんだね」


「そうよ。とってもね。たかちゃんは幸せでないの」


「わからないんだ。なんて言っていいかもわからないけど、馴染めなさそう」


「男の壁にぶつかったのね。皆通る道よ。嫌々種まき機になって過ごすのか、なにか楽しいことを見つけて種まきするかはたかちゃんしだい。つまり、どうにでもできるって事」


「種まきは変わらないんだね」


「もしかして、スケベが気持ちよくなかったの」


「う~ん。特別。母さんとだったし。抵抗があったから」


「そうだよね。事前に儀式のことは教えていたけど、記憶が曖昧なら忘れていたでしょうね。辛い思いさせてしまったわ。浮かれて考え足りずだったわ。ごめんなさい」


「でもね、これだけは言わせて。最初の時って、大きくなってすぐに異性を感じてない人としないと上手くいかないの。男の子は身の回りのこと全部身内の人にしてもらうのが普通だから、スケベに悪い印象を与えないようにデータを取った結果なの。わかってほしい」


「そんな悲しい顔しないでよ。ただ、どう生きていけばいいのかわからないだけだからさ」


「うん。ゆっくりと見つけていけばいいわ。母さんは味方なのよ。守るからね」


「うん。そうする。ありがとう。寝るね」


「え~寝るのぉ。初夜よ。心ウキウキ踊る初夜なのよ」


「母さん。話聞いてた」


「うん。聞いてたわよ」


「いや。聞いてないね」


「しっかりと聞いてました。母さんは理解してるの。本能が違うことを私の口を使って言ってるだけ」


「母さんの本能でしょ」


「違うわ。全女性の本能よ。今、代表として私の体を使われてるのよ」


「こじつけはいいから。寝るね。寝かせないなら部屋に戻るよ」


「初夜なのに……」


「あ~うるさい!昨日も今日もしたでしょう」


「だから火がボウボウと燃え盛ってるのぉ。白い消化液かけて!かけないと大火事になっちゃう。癖になるような凄いことしたのはたかちゃんなんだからね」


「俺のせいにするのかい」


「違う!虜にする魅力と力を持ってるって言いたかったの」


「あ~頭ぐちゃぐちゃだ~。いいだろう。なんてことないさ。ほら、踊るんだろ。乱れてみろよ」


「まだ、ショーツ脱いでないよ」


「こうするんだよ」


「ずらしてするなんて、聞いたこと無い!」


「あぁぁ消化ホースきたぁ 癖になるぅ気持ちぃ」


「自分だけ良くなってなに言ってんだよ。もっと力いれろよ」


「消火するからな。もう欲しがるなよ」


やっと寝れる。

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第二の人生を家族と共に生きる 女月満月(めつき まんつき) @yutaka1201

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