5.黒組の恋愛事情

「…えっと、あなたは?」

後ろを向くと、ティさんたちより高いがそれでも小さな紫髪の少女が立っていた

「申し遅れました。私はイールンネーイ・ローカと言います。どうぞイルとお呼びください」

 使用人のような挨拶で、どう反応していいのか困ってしまう

「イルさんは、このクラスの情報について詳しいんですか?」

 突然背後に現れたことから、情報収集が得意だと悟り、聞いてみる

「家業が新聞屋でして、情報を集める手伝いをしているうちに得意になりました。情報が欲しいならぜひご相談ください。初回はサービスしますので」

 ニコニコと人当たりの良い笑顔で話すので、早速聞いてみることにした


「このクラスの好きな人って、それぞれ誰なんですか?」

 すこし、距離が近くなり声を潜めながら教えてくれる

「まず、ティさんとショーさんが両想いなのは先ほど言いましたよね?」

 小さく頷くと、イルさんも頷き話し続ける

「まず、あそこの2人。付き合ってます」

 視線を向けると、後ろの方で金髪の男性と桃色髪の女性が甘ったるい雰囲気を出している。隣の男子2人組が、苦笑いしている

「あっちの2人は双子なんですけど、妹は姉に片想いしてます」

 …急に重くなりましたね

「男女、同性、姉妹と。…このクラスだけ小説みたいな恋愛してますね」

 イルさんは、こちらを見てそうですねと笑った


「…他にもありますが、それはまた皆んなの名前を覚えてからにしましょうか。あ、私の好きな人は優しくておっとりした人です」

 黒組がいる方を向いて話すので、視線の先が誰かを探す

 …が、それらしい人は分からない

「どなたですか?」

 聞いてみるが答えてくれない

「イルさん?」

 名前を呼ぶと、やっとこちらを向いた

「秘密です。頑張って探してみてください」

 優しくておっとりしている、大人しい人なら誰でも当てはまりそうな条件で首を傾げてしまいそうになる

 男性か、女性か。まず、このクラスなのか。聞きたいことはたくさんあるが、これを聞くのは皆の名前を覚えてからにしましょう



「次はショーさん、やりましょうか」

 いつのまにか、2人のじゃれあいが終わっていたので声をかける

「はーい」

 間延びした、のんびりとした声が聞こえてくる

 …ショーさんの声ではなかったので、声のした方へ視線を向けるがショーさんしかいない。不思議に思ったので尋ねてみた

「今の声は誰ですか?」

 すると、下と指でジェスチャーされる

「こんにちはー!」

 視線を向けると、そこには犬?のような白い耳を生やした白い生物が喋っていた

「こんにちは…」

 会話ができるようだが、余計になりか分からなくなる。何これ、と視線をショーさん達に向けると笑うのを我慢していた

 全長30cmくらいで、目をキラキラと輝かせているクマ、なのだろうか?

「えっと、貴方は?」

 悩んでいても仕方がないので本人に聞いてみる

「おれ?おれはね、おもちって名前貰ったの!モッチーって呼んでいいよ」

「まじで、もち見たいなモチモチしてるんだよね」

 おもちくんを抱き上げ、ほっぺたをモチモチと触っている

「そーいや、大福は結局なんの生き物なの?」

 大福?と疑問に思っているとおもちくんが頬を膨らませ怒っている

「おれは大福じゃない!おもち!」

「あー、間違えちゃった。ごめんねモッチー。それで、なんなの?」

 大根演技で謝っている。絶対わざとですね…

「おれ?…んー。わかんない!」

 黒組には不思議が生物がいるらしいが、どこから迷い込んだんでしょうか

「…こんな生き物見たことない」

 独り言が聞こえたようで、おもちくんが話しかけてきた

「おれはおれだから!大丈夫!」

 根拠のない言葉が返ってきたが、その純粋無垢な笑顔に癒された

「とりあえず、適性を調べてみますか」

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