2.初めまして

「初めまして」

 まずは挨拶が大事

「…え、だれ?」

 あの剣を受け流していた少女が不思議そうにしていた

「…見たことあるような顔してるけど。…思い出せない!!」

 今度は勢いのある剣を振った少女が言った

 …意外とこの2人ちっちゃいですね

「自己紹介が遅れましたね。私はノルティーア・カイオスと言います。ノアって呼んでもらっていいですよ」

 出来るだけ笑顔で、第一印象を良くすることを心がける


 なぜか、どちらも苦手そうな顔をしてくる

 …ふむ。作り笑いなのがバレましたか

 ならもういいでしょう


「単刀直入に聞きます。あなたたちは授業を受けたいですか?」

 真顔に戻して聞くと、全員が顔を歪める


「突然話しかけてきたと思ったらなに?善意のつもりなの?そうなら帰ってもらっていい?」

「ティさんの言う通りですよ。帰ってください」

 皆が口々に私への悪意を伝えてくる

 その態度だけで、授業に嫌な気持ちを持っていることが分かってしまう

 …2つの意味で悲しくなってきますね


「いえ、別にそんなつもりでは…。ですので、話を最後まで聞いてください」

 そう答えると、少し静かになる

「まず、ティさん?なぜ嫌なのかを聞いてもいいですか?」

 受け流しの少女が呼ばれていた名前で聞いてみる。彼女は、とりあえず自己紹介をしてから理由を話し始める

「私はテイラット・マッ…いや、なんでもない。まあ、うん。ティでいいよ、そのままの名前嫌いだし…。私が授業が嫌だと思う理由はね、勉強ができないからだよ」

 勉強ができない?苦手なのか、嫌いなのか…

「勉強が好きではないんですか?」

「違うよ。勉強ができないんだ、私たちは黒組は図書室にも入らない、授業では自習と黒板に書いてあるだけで教科書もない。できないんだよ」

 周りの黒組の人たちがうんうんと頷いている


「…そうなんですね。ありがとうございます。他に理由はありませんか?」

 予想以上に差別されていて対応に困りますが、意欲があることが分かったのは良い収穫になりましたね

「あっ…」

 勢いのある剣を振った少女が思い出したように声を出した

「えっとまず、私はショウオーリ・ウーサン。ショーって呼んでね」

 先ほどの対応とは変わり、好感を持てる挨拶をされる

「…前に、一度だけちゃんとした授業をしてもらったことがあるんだ」

(意外ですね、あの教師陣が自ら見下している相手に歩み寄るなんて…)

「…ストレスを発散しに来たんだよ」

 そう聞いた瞬間私は顔を上げた

 思い出したのか嫌そうな顔をする者、苦笑いする者、視線を逸らす者、様々な彼らの行動がそれを事実だと訴えていた

「…詳しく伺ってもよろしいですか?」

 思い出したくないだろうが、聞くことにした

「申し訳なく思ってるんだろうけど、表情全く変わんないから分かりにくいね」

 笑われてしまったが、これは生まれた時からなのでどうしようもできない

「すみません。作った表情はお気に召さないようなので」

「うん、作っているときよりはマシだね。…あれは、入学して2ヶ月たったくらいかな?」

 少し上を向きながら思い出しながら話している

「…教室に入ったら、いつもいないはずの担任が教卓前に立ってたんだ。そこから授業が始まった。まず問題を書いて、私たちに聞いたんだ。全く習ったことのない範囲で、私たちは答えることができなかった。そう素直に答えたら、それを待ってましたと言わんばかりに笑顔になって、答えられなかった私たちを殴ったんだ」

 それを聞いて、気分が悪くなった

(他のクラスではそんなことをしているなんて聞いたことがない、おそらく黒組だけなのだろう。嫌悪感しか湧かない…)

「それっきり殴られることはなかった。…つまり、授業はなくなったってわけ」

「…うん。私、やっぱり決めました」

「ん?何言ってるの?」

 会話のキャッチボールを無視して、会話ボールを投げつける

「私が、あなたたちに勉強を教えたいと思います!」

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