1.あれは?

「——ァ様!どうかされましたか?」

 その声で、思考から現実へと戻る

「…なんでもないです」

 そう言いはするが、私の視線は外に向けたままだ


 授業の終わりの鐘が鳴り、皆がクラスで騒ぎ出す

 授業、授業外でも変わらないを見つけてから、私の生活は変わった


 授業が終わると同時に人に囲まれる

 何が起きても無関心を通し、学年一の秀才であり続けた

 全てに退屈だと思い

 全てがつまらないと思った


 これも、彼らの姿を見た時から変わった





——数週間前


「—ん?」

 遠くからカキン、カキン、と剣がぶつかる音が何度か聞こえる

「何かありましたか?」

 隣に座る取り巻きAが話しかけてきた

「あの方たちは?」

 授業中にも関わらず、外で剣を振っている彼らの姿を不思議に思って尋ねる

「…あぁ。黒組ですよ…

「くろ、ぐみ…」

 そんなものがあったなと、記憶の中から探し出す

 学園では、強さにやってクラス分けされる

 上から白、青、緑、黄、赤、黒


「底辺の悪魔もどきですよ」

 取り巻きAは彼らをそう例えて嘲笑する


(悪魔もどき…か)

 悪魔もどき、普通の悪魔よりツノや尻尾、羽などが小さく、一般的に劣っているとされる悪魔に使われる比喩だ

 要するに…底辺、学園で最弱と呼ばれるクラスだ



「あいつら、授業も受けずに木剣振るってますよ。どうせ、そんなことしても成長しないのに、間抜けな奴らですよね」

 そう笑いながらこちらに問いかけてくる

 それに、答えずに彼らの方を向きながら心の中で悪態をつく

(教員が真面目に授業してないのに、成長するわけないじゃないですか…)

 そのまま見ていると、急に1人の少女がもう1人の少女から距離をとった

 そのまま叫びながら剣を振るう


 勢いよく、投げやりに見えるその剣の軌道は綺麗だった

 あの勢いのまま、あれほどまで綺麗な軌道を描けるのは、基礎がしっかり出来ている証拠だろう

 それを受けるもう1人の少女もしっかりと受け流し、反撃をしていた

 底辺といわれ続けた彼ら、彼女らの努力はどのようなものなのだろうか

 学園でそれだけ馬鹿にされようが、努力し続けることができる彼らがもししっかりと学を得ることができたなら、どれほどの進化を見せてくれるのだろうか


「——これで授業は終わる。課題、しっかり終わらせとけよー」

 授業が終了して教師が出ていく、それと同時に私は勢いよく立ち上がる

「…急に立ちましたが、どうかされました?」

「彼らに、興味が湧きました…」

 空いた窓から、タイミングを見計らったような風が吹いた

 顔横にある髪を耳にかけながらも彼らを見る

 首には、魔王候補の印であるひし形の痣があった







「彼らはどれほど、私を楽しませてくれるのだろうか」

 彼らの元へ向かいながら、私は誰にも聞こえないように呟いた

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天才悪魔ちゃんは底辺に興味があるようです 黒丸 @kuromaru0522

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