第4話 初めての夜 相手は兄
4 初めての夜 相手は兄
「カーテンを閉めないでほしいの」
シリはエマに頼んだ。
いよいよ、明日はいとまの式だ。
シリがこの城で過ごす夜は残り2晩。
空には雲ひとつなく、大きな丸い月が銀色に輝きを増してシリの部屋を照らしていた。
美しい月の光を浴びて眠りたい。シリが伝えると、
「そうしましょうか。今夜は良い夜ですから」エマはベットに横たわるシリに優しく布団をかけた。
すぐにシリは眠ってしまった。長い扇のようなまつ毛は頬に触れるばかりだった。
愛おしげにシリを見つめた後、エマは部屋を出ていった。
今夜はシリの部屋に近寄らないようにとゼンシから指示があった。
月が高い所で冴えた光を放っている。
石畳の廊下を背が高く痩せた男が歩いている。ゼンシだ。
指示どおり、シリの部屋周辺には人がいない。
ゼンシはシリの寝室の前に立ち躊躇なく扉を開いた。
カーテンを開け放した寝室は月明かりで眩しいほどだった。
熟睡しているシリの瞼の奥の目は青色だ。
ぴっちりつむった目は開かない。
月光を浴び、幸せそうに眠るシリは息が止まるほど美しかった。
ゼンシは靴を脱ぎ捨てベットに登った。
「シリ・・・」
掠れた声で名前を呼び、シリの唇に口づけを落とした。
唇に何かが触れた。自分の身体の上に重いものが乗っている。
うっすらと瞼を上げると、熱を孕んだ青い瞳がシリを見つめていた。
ハッと気づく。
この瞳、自分と同じ色の瞳。ゼンシだ。
ゼンシがシリの上に乗っている。
「兄上。何をなさっているんですか」
震えが止まらない。ゼンシがなぜ寝室にいるのか。
なぜ、シリの上に乗っているのかも理解できない。
身体が動かない。強い力で抑えられている。
ゼンシの顔がシリに近づいていく。
歯を喰い縛って首を振って離れようとした。
そんなシリの頭をゼンシは両腕で抱え込み、
唇で唇をこじ開け探し当てた舌を舌で絡める。
シリは声にならない声をあげた。
大きな声を出したくても唇を塞がれて声にならない。
(嫌だ。怖い。なぜ?)
様々な感情が渦巻く。
(あぁ。なんでエマは駆けつけてくれないの?)
(誰か!助けて!)
ゼンシが脱いだ服と脱がされたシリの服は床に散らばっていく。
乾いた空気が徐々に湿っぽくなってきた。
何度も声を出してみたけれど誰も助けてくれなかった。
自分の上に乗っているゼンシは見たことがない余裕のない顔をしている。
結婚相手と結ばれる日のことを想像したこともあった。
もっと良いものを想像していた。
現実は違う。
恥ずかしくて、生々しくて、痛くて、辛い。
(早く終われば良いのに)
シリは声も出せずに唇を噛み締めた。
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