心拍数とストレスの間で
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
最近、内科で心拍数が100を超えていることを指摘され、少し心配になった。医師が心配するのも無理はない。通常、安静時の心拍数は60〜100拍/分とされ、それを超える頻脈は、何か体の不調を示している可能性があるからだ。確かに最近、心臓が速く打つことが増えたように思う。だけど、それ以上に心のほうが慌ただしく、まるで胸の中に時計の針が乱れて動いているような感覚だった。
ここしばらく、どうも落ち着かない。しんどい日が続いている気がする。朝起きても体がだるく、夜は眠れず、考えが頭の中をぐるぐると巡っている。何に悩んでいるのかを自分でもはっきりとつかめないくらい、問題が山積みになっているように感じている。仕事のこと、人間関係、自分自身の体調のこと…どれもが一つ一つ解決しなければならない大きな問題のように思えてしまい、どこから手をつければいいのかもわからない。あれもこれもと気にしすぎて、最終的には手が止まってしまう。そして、その状態がさらにストレスとなって心拍数を上げているのかもしれない。
心拍数が高いのは、体が「緊張状態」にあることを示しているらしい。アドレナリンやコルチゾールというホルモンが分泌され、体が緊急事態に備えるために心拍数や血圧が上がる。私の体は、まるで常に何かに備えているようだ。だけど、何に備えているのだろう?実際に解決しなければならないことはたくさんあるけれど、考えるだけで気力が奪われてしまい、動き出すことができない。自分が何に悩んでいるのかも、もうよくわからないほどだ。
医師の診察を受けたその日、ふと自分の心の状態に向き合ってみることにした。ここまで心拍数が高いのは、もしかすると体が警告を発しているのかもしれない。問題に気づいてほしい、もう少し休んでほしい、そう言っているのだとしたら、自分の体の声を無視し続けることはできない。だけど、どこから始めればいいのだろう?何から手をつけていいのかがわからない。
そんなときに試してみたのが、頭の中にある考えや悩みを紙に書き出すことだった。最初はどこから書けばいいのかもわからなかったけれど、とにかく思いつくままに書いてみることにした。仕事の不安、将来の心配、人間関係の問題、自分の体調についての懸念。書いているうちに、頭の中が少し整理されていくのが感じられた。悩みが具体的な形になると、それに対してどう対処すればいいのかが少しずつ見えてくる。もちろん、すべてがすぐに解決するわけではないけれど、少しでも自分の気持ちが軽くなるのを感じることができた。
自分の悩みを具体的に言葉にするのは、ときに怖いことでもある。見たくなかった問題に向き合うことになるからだ。それでも、それを避けていては何も変わらない。今の私にとって必要なのは、少しずつでも前に進むこと。無理をしないで、一つずつ解決策を探していくことだ。心拍数が上がってしまうのは、私の体が危険を感じている証拠。だからこそ、その警告を無視しないで、ゆっくりと向き合っていこうと思う。
ストレスを減らす方法についても、いくつか試してみた。例えば、適度な運動や深呼吸をすること、好きな音楽を聴くこと、自然の中を歩くこと。最初はうまくいかないこともあったけれど、少しずつ自分に合ったリラックス法が見つかってきた。自分の体や心をリセットする時間を作ることで、心拍数も少し落ち着いてきたように感じる。それでも、完全に解消されたわけではないけれど、少なくとも以前ほど緊張状態が続くことは少なくなった。
悩みを抱えることは、誰にでもあることだ。でも、それが自分を追い詰めてしまうほど大きなものになったとき、自分一人で抱え込むのはとても難しい。だからこそ、誰かに話すことも大切だと感じる。医師やカウンセラー、家族や友人、信頼できる人に少しでも自分の気持ちを伝えることで、心が軽くなることもある。自分が何に悩んでいるのかをはっきりさせることが難しいときでも、話しているうちに少しずつ見えてくるものがあるかもしれない。
心拍数が100を超えているという医師の言葉は、私にとって大きな警鐘だった。無理をして頑張りすぎることは、体にとっても心にとっても良くないのだと気づかされた。そして、自分の体や心が発するサインにもっと耳を傾ける必要があると感じた。悩みがたくさんあって、どれが本当の問題なのかわからなくても、少しずつでも向き合っていくことが大切だ。
私の心拍数が平常に戻る日は、もう少し先かもしれない。それでも、その日に向けてできることを続けていこうと思う。心のざわめきと体の不調に向き合いながら、一歩ずつ、無理をしないで、自分のペースで進んでいく。
心拍数とストレスの間で 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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