第73話「動物と会話ができる少女」
『反響定位(エコーロケーション)』とは、シロイルカと言う動物は鼻腔内で発した超音波をメロンと呼ばれる脂肪組織で束ねて外に発射し、その反響音を聞き分けて海中の物体の位置や形、大きさを特定する能力であり、この能力のお陰で、氷に覆われた海や暗い海の中を泳ぐ事ができるのだ。
シロイルカのコードネームを持つシロルも、この反響定位を陸でも海中でも使う事ができ、索敵においては高い能力を有している。
戦闘向きな能力ではないが、仲間との連携で高い力を発揮する事ができる。
ちなみに、動物の方のシロイルカにはメロンと呼ばれる脂肪組織があると言ったが、反響定位と言う能力は、人間であるシロルのような豊満な胸とは無関係なので、紳士の諸君はガッカリしないでくれ。
「どうすんの? 相手は野生の猿だろ? 水着を奪うだけの相手とは言え、動物を傷付けるの嫌なんだよなぁ」
「そこは任せてください星音くん! 実はワタクシは、動物と会話ができるのです!」
「……とうとう不思議ちゃんになったか」
「ちょっとぉ!? 勘違いしないでください! 反響定位の応用で動物とコミュケーションができるだけですから! ワタクシが交渉してきます!」
猿が隠れてる茂みに一人で向かうシロルの後ろ姿を見ながら星音は思った。
(頼むから、水着を奪われて、その無駄にデカい胸を晒すなよ? 僕は見ないようにするが、その、胸がアレな月音姉さんはショックを受けるから!)
♡♤♧♢
シロルは、露天風呂の茂みに隠れてる猿に向かって呼びかけた。
ちなみに、動物と会話する時のシロルの声は人間には聞こえず、動物にしか聞こえないようになっている。
(お猿さん、聞こえますか? ワタクシは人間のシロルと言う者です)
(……なんだ、お前さんは、ワシと会話ができるのか?)
(はい、なぜワタクシ達、人間の水着を狙うのですか?)
(妻と娘が居る。だが、妻がもう時期、息を引き取るのだ。妻は人間に憧れててな。妻に相応しい水着を探していたのだが、どれも妻が喜びそうにないものばかりだった)
(奥さんが居るのですね? しかし、アナタが人を襲うとアナタ自身が危険になります。アナタが人間に殺されたら、奥さんも娘さんも悲しみますよ? もう命を賭けて水着を奪う必要はありません。ワタクシが人間の皆様と交渉しますので、何かリクエストはありませんか?)
(……そうだな。あそこに立っている銀髪ツンツン頭の人間が着ている水着が欲しい)
♡♤♧♢
「で? 交渉はどうなった?(まぁ、全然期待してないけど)」
シロルが戻って来ると、顔を赤くしながら、僕に向かって、とんでもない発言をした。
「ほ、ほほほほ星音くん、そのスク水脱いで、お猿さんに献上してくださいぃぃ!!」
「……………キャー! シロルちゃんのエッチ!!」
こうして、水着取りの猿は人間のスク水を手にして山に帰り、妻にスク水を着せて晩年を過ごしたのでした。
めでたしめでたし。
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