第66話「同盟」
「……」
「大人しい坊やだな。見た目が小僧の老人に臆したか?」
ファントムが挑発したが、軍服の軍人はファントムではなく気絶している月音を見ていた。
「アレが、黒翡翠か」
「……おい、小僧」
ファントムは容赦なく吸血拳銃を乱射した。
「ワタシの命の恩人をアレと言ったか? あの子は人間だ。物ではない!」
軍人はファントムからの銃撃を回避しながら、ナイフを持ってファントムの喉を狙った。
「死ねぇ! がっ!?」
軍人は、ナイフを落としたかと思うと、自分で自分の首を絞め始めた。
「こ、これは」
「血脈侵略、ワタシの血を一滴でも肌に付着した人間を意識を残したまま人形のように操る能力だ。そのまま踊り狂い果てるが良い」
ファントムの宣言通り、軍人は自分で自分の首を絞めながら、もがき苦しんで、踊るように動きながら気絶した。
「ふん、この程度の呪縛すら逃れられないとは、鍛え直せ若造。殺さないだけマシだと思うが良い」
ファントムは吸血拳銃を回した後に、配下の二人に渡した。
「ファントム様、お身体は本当に大丈夫ですか?」
「……信じられんが、ワタシの若返り病が治っただけではない。第二の人生を歩む事が許されてしまったようだ。しかし、悲しいな、こんな若い娘さんが黒翡翠に取り憑かれたか。さぞや心の傷が大きいのだろう」
「月音閣下はいかがします?」
「目が覚めるまで安静にさせるが良い。そして、告死蝶のボスが来てるな? その子と話がしたい」
♡♤♧♢
「うわぁぁぁん! ファントム様が普通に歩いてるぅ! 良かったぁ!!」
「ふむ、シロイルカよ。貴殿はすぐに人様に迷惑をかける。だが年頃の娘さんは、それぐらいヤンチャな方が良い」
まるで父親と娘のような関係のファントムとシロイルカの様子を見ながら、星音は思った。
「ファントムさん? アナタは寿命が短かったはず、本当に大丈夫なのですか?」
「ほう、
ファントムは、椅子に座ってる星音と対面する形で椅子に座った。
「我々アルセーヌは、告死蝶と同盟を結びたい。そして、できるなら秤蜘蛛と面会させてほしい。月音さんの能力『黒翡翠願望具現(ブラックジェイド)』の詳細を秤蜘蛛に提供したい」
「僕じゃなくて秤蜘蛛? なんでです?」
「……ワタシは年寄りだからかのぉ、星音くん、君に真実を受け止められる覚悟がない。これは君を
深く考え込んだ後、星音は同意した。
「
「そうだ。奴らが来たと言う事は……近い内に戦争が始まる。多くの罪の無い者達が犠牲になる。ワタシは月音さんから与えられた命を使って、君達に助力をして被害を最小限にしたい」
「分かりました。よろしくお願いします」
こうして、告死蝶とアルセーヌは同盟を結んだ。
「……時に星音くん、年寄りの要望で済まないが、シロイルカと仲良くなってくれないか? この子は君のファンなんじゃ、だから意地悪したのだよ」
「ファントム様!? そ、そんなんじゃないし!」
シロイルカの反応を見て、星音は考えてしまった。
(……コイツ、まさかツンデレか?)
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