第65話「新たな命」
「月音閣下! ファイトです! ここには我々しか居ません!」
「わ、分かってても恥ずかしいものは、恥ずかしいんだよぉ」
私は震える手で台本を握りながら、朗読した。
「あ、あ愛するアナタ様ぇぇぇぇ」
緊張しすぎて先が読めねぇ!
私の鈍臭さに嫌気が差してると、ベッドの上で苦しんでるファントムさんが私に視線を送った。
「はぁ、はぁ、よ、良いのですよ月音さん、こんな寿命の短い者にブラックジェイドを使う必要はありません。その能力の危険性もワタシは理解してます……あぁ、でも、死ぬ前に父の友人と同じ病気の持ち主に会えただけでも良かった……」
「……ファントムさん?」
え、嘘だろ? 急に動かなくなったぞ!
すぐさま仮面を付けた男女二人組が駆け寄った。
「ファントム様! いやだ、死なないでください! ワタシ達はアナタ様に命を救われたのです! アナタ様が亡くなったら、我々はどうすれば良いのですか!?」
「お願いです! 返事をしてください!」
や、ややややばい! マジで目の前で人が死んじゃう!
もう恥ずかしがってる場合じゃない!
「あ、愛するアナタ様へ、これまで過酷な人生を歩まれた事と思います。ですが、アナタ様は孤独と戦い抜いた強い人です。安心してください、アナタ様が望んでいた普通の人間になる為の第二の人生を捧げます」
ーー『黒翡翠願望具現(ブラックジェイド)』発動!
……ん? あつ!? なんか胸が熱いんだが! なんじゃこりゃぁぁぁ!!
♡♤♧♢
「こ、これが、ブラックジェイド?」
仮面の男性が、月音の胸から光の玉が出たのを見ると、月音は気絶して、光の玉がファントムの中に入って行った。
「……う、げほ! げほ!」
「ファントム様!」
ファントムが咳き込むと、ファントムは驚いたように自分の手を見ていた。
「苦しくない? あんなにワタシの体を這いずり回っていた痛みも苦しみも何も感じない? そうか、ワタシは月音さんに救われたのか」
「ファントム様! 今すぐ医者をお呼びします! 肉体に異常が無いか調べる必要があります!」
「……いや、その必要はない」
ファントムが、部下の要求を拒絶すると、窓ガラスを割って軍服を着た謎の侵入者が現れた。
「ファントム・オブ・ザ・ブラッド、その命を貰い受ける」
「て、敵襲だ!」
仮面の二人組がファントムを守ろうとしたが、ファントムはベッドから立ち上がり、二人押し退けて、軍服の男に向かって言った。
「その制服、ドイツの『シュトゥルムアングリフ』の者か? 父の友人である黒翡翠病患者を殺害して130年前の混沌を作った諸悪の根源。ワタシの首を取るのは構わない。だが、この命は月音さんから貰った新たな命だ。悪いがまだ死ぬわけにはいかぬ」
ファントムが指を鳴らすと、配下の二人組が二丁の拳銃をファントムに渡して、ファントムは銃を構えた。
「貴様には我が父の友人の
「ふ、見た目は少年だが、さすがはファントム。我が命を捨ててでも貴様の指一本でも貰うぞ!」
「若造が、粋がるな。『血脈侵略(ブラッドカースト)』!!」
ファントムが握ってる二丁拳銃から管のような物が伸びて、ファントムの腕に刺さると、拳銃がファントムの血を吸い始めた。
「我が吸血拳銃の前で踊り狂って果てるが良い」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます