第50話「多重人格災害」
サバクトビバッタと言うバッタが居る。
その名の通り砂漠に生息しているバッタで、普段は群れを作らないバッタだが、体色が変異する相変異と言う特性を持っていて、孤独相から群生相と言う体色になると凶暴化して特殊なフェロモンで群れを形成して不定期に農作物を食い荒らす
蝗害の被害は尋常ではなく、とある宗教の聖書の中ですらサバクトビバッタを恐れるレベルで、2003年〜2005年の蝗害の例を見ると、サバクトビバッタの群れが農作物を6ヶ月以上も食い荒らすせいで、現地の20ヶ国が合計25億ドル以上もの損失をした大災害になった。
蝗害の発生は不定期である為、予想する事が困難で、未だに現地住民や昆虫学者の力を借りてまで対策を練っているが、まだ解決方法が見つかっていない。
告死蝶No.5『
「女王陛下、お覚悟を!」
重飛蝗が壁を蹴ると、ロングウィットンに向かってではなく、彼女とは別の床、壁、天井を、それこそバッタのように何度も飛び跳ね始めた。
「何の真似だバッタ? 死ぬ前の曲芸か?」
飛び跳ねてばかりで攻撃してこない事にロングウィットンは苛立ちを募らせていると、信じられない光景が広がった。
なんと、重飛蝗が50人にまで増えたのだ。
目の錯覚? いや、これは分身?
「これが拙の奥の手! 超高速で移動する事で分身を作り、その分身達に拙の人格を宿す事で別人として動かせる! その名も『
50人もの重飛蝗達が、群れを成して襲い掛かって来た。
ロングウィットンは、一人の分身を切り裂いたが、手応えがない。
しかも厄介なのが、分身一人一人が、まったくの別人の動きをするせいで、どれが本物か分からない。
ロングウィットンは、反射的に自分に迫って来る剣をガードしたが、それすらも手応えがない。
「
ロングウィットンは、剛力で大剣を振り回して、重飛蝗の分身達を消していくが、いくら斬っても斬っても湧いて出てくる。
そう、これが多重人格災害の恐ろしいところである。
重飛蝗が飛び続ける限り、ほぼ無限に分身が湧き続けて、相手は本物の重飛蝗に辿り着く事は不可能なのである。
「チェックメイトであります」
「っ!?」
ロングウィットンの背中には冷たい感触を感じた。
本物の重飛蝗が剣を彼女の背中に突き付けたのだ。
「拙が本気になれば、陛下を背後から刺す事もできます。ですが、拙は陛下を殺しに来たのではありません」
「……見事だバッタ」
ロングウィットンは、敗北を認めて大剣を床に落とした。
ロングウィットンの配下達からは、ざわめきが起こった。
「そ、そんな、陛下の背後を取るなんて!」
「いや、そもそも分身なんて卑怯な手を使うのが良くない!」
配下達が騒ぐ中、ロングウィットンは一喝した。
「黙れ! 貴様らには分からぬか? このバッタは、今の技を手にするのに、どれだけの歳月をかけた事か。我々が剣技を磨くのと同レベルの訓練を積んだ証だぞ!」
ロングウィットンの声に鎮まり返った玉座の間。
重飛蝗も剣を床に落として、再びロングウィットンの前で片膝を床についた。
「陛下、このような手段を使った事をお許しください。ですが、拙は何としても陛下の力が必要なのです」
「……そんなに余の力が欲しいか?」
「
ロングウィットンが、頭を下げてる重飛蝗の前で両膝を付いて、重飛蝗の顔を両手で持ち上げた。
「ならば、余と結婚して、余の
「……は?」
これには名探偵である重飛蝗ですら予想できず、二人はスピード結婚した。
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