第51話「極祭の花」

『と、言う事でロングウィットン陛下と結婚してしまったでそうろう』


「何勝手に結婚報告してんのお前ぇ!!」


 1月の半ば、3ヶ月で戻って来ると約束してたはずの重飛蝗が、イギリスの闇社会を束ねる組織『ラウンドホワイト』のボスであるロングウィットンと結婚してしまったと言う衝撃的な報告を受けた秤蜘蛛はキレかけていた。


 秤蜘蛛は心の中で思っていた。星音様は四人の男の娘メイド達とキャッキャッウフフしてて羨ましいと思ってたら、同僚の重飛蝗が敵組織のボスと結婚して恨めしいと心の中で呪っていた。


『秤蜘蛛、怒ってるでござるか?』


「怒ってませーん。てか口調変えるのやめてくれなーい?」


『なんかウィ殿が、こう喋ってくれと、しつこいもので』


「はぁ〜? もうお互い愛称で呼び合ってるのぉ〜?」


 秤蜘蛛が握ってるスマホにヒビが入ったが、重飛蝗は冷静に語り続けた。


『落ち着くでござる。拙は実質ラウンドホワイトを手にしちゃったでござるから、ウィ殿と協力して事件の真相を探るでおじゃる』


「口調ぐらい統一しろ。で、黒翡翠病の正体は生命体で、それを意図的に発生させた犯人が居るんだっけ? そんなのが居たら人間じゃないでしょーが」


『その通りでござる』


「……え? 適当に言ったのに当たったの?」


『うむ、秤蜘蛛ですら知らないトップシークレットな情報ゆえ、この情報が秘匿ひとくされているイギリスに単身で乗り込んだでござる』


 秤蜘蛛は、怒りを鎮めて、いつもの冷静な秤蜘蛛に戻って重飛蝗に尋ねた。


「犯人の目星は付いてるのですか?」


『そうでござる。しかし、残念ながら名前しか知る事ができなかったでござるが、拙の推理通りの存在の名前が出たでござる』


「名前は?」


極祭きょくさいの花、この生物がいつ頃に誕生したのか分からないでござるが、実は以前から黒翡翠病に似た事件が500年前にあったと思ってて調べてたでござるが、今回やっと名前だけ入手する事ができたでござる』


 極祭の花? なんだそれ?


 その生物が実在するなら、今後の告死蝶の活動方針に関わる重大な事ではないか。


「500年前に何があったのです?」


『いや、真実か分からないでござるが、この生物を巡って国が滅びたり、極祭の花を手にする為だけに国一つが当時の全戦力を使い果たしたり、極祭の花を手にすれば世界を手にできると、なんかこれって黒翡翠病に似てないでござるか?』


「……」


 秤蜘蛛ですら知らない生命体。なんだそれ? もしも生物なら、とっくに死んでないか?


「まさか、その極祭の花が、まだ生きてると? 姿形すら分からないどころか、本当に実在してたのか謎な生物が?」


『そうでござる。拙も半信半疑でござったが、名前が出ただけでも、極祭の花は実在すると確信したでござるが、極祭の花とは何者なのか、何が目的なのか、今後はウィ殿と協力して調査するでござる』


「分かりました。引き続き調査を依頼します重飛蝗」


 重飛蝗との通話を終えた後に秤蜘蛛は心の中で叫んだ。


 ーーめんどくさい展開になったなぁ、もー!!

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