第40話「聖夜の対決」

 まず、俺は三日前にお前と水無月 月音が仲良くしてるのを見ていた。


 パンダ、お前と逸れた時は焦っていたが、持ち前の明るさで月音を懐柔かいじゅうするとは中々やるな。


 そして、お前は月音との偽りの友情を作って、奴を油断させてから、真っ赤に染めて黒翡翠を手に入れた。


 くくく、俺が言うのもなんだが、かなり残酷な手段で手に入れたな。


♡♤♧♢


「……?」


 ヒョウが何を言ってるのか分かってないパンダは、自分なりに解釈しようとした。


 偽りの友情? ヒョウは冷徹な男だから、そう見えたのか?


 そして、真っ赤に染める? 確かに月音はサンタの格好をしていた。


 流石はヒョウだ。そこまで見抜いていたとは。


「本当は俺も黒翡翠を見たいが、その輝きはボスが見るべきだ。俺達は他の組織に黒翡翠を奪われないように中国に帰るぞ」


「うん! これでボスがナデナデしてくれて、世界はボスが目指す天下泰平てんかたいへいの世界になる! もう私達のような人間が生まれない平和な世界が来るんだ!」


 パンダとヒョウが喜んでいると、頭上から幼い少女の声が響いた。


「ごめんね。黒翡翠は、アナタ達が思ってるようなものじゃないよ」


 すると、パンダとヒョウの前に、巨大な鉄の怪物が頭上から落ちて来て姿を現した。


「Aaaaaaaa!!」


 3mもある青黒い鉄の怪物で、顔は凶暴な龍のように邪悪で、両手両足に鋭い爪が生えたバケモノであった。


 しかも、バケモノの肩にはエプロンドレスを着た少女が乗っていた。


「な、なんだこのバケモノ!?」


「すごーい! ボスが言ってた通り、日本には怪獣が居たんだ!」


 鉄のバケモノと少女に気を取られていると、背後から男の声が聞こえた。


「悪いな。結局お前とは戦う事になったなヒョウ」


 ヒョウが振り返ると、そこにはスキンヘッドでサングラスをかけた、白スーツの男が立っていた。


 その男を視認してから、ヒョウは狂気に満ちた笑顔を浮かべた。


「また会ったな、狩野 熱夜! いや、本当の名前を教えてくれ!」


「告死蝶No.8『灼熱蜂』」


「やはりか、アンタが告死蝶で良かったよ。パンダ! あの男は俺がやる! お前はそのバケモノの相手をしてくれ!」


 パンダは、黒翡翠(偽物)を大事に隠してから、目の前の鉄のバケモノを睨んだ。


「悪いけど、私は手加減できないから、死んでも恨まないでね」


「AAAAAAA!!」


 パンダは、袖をめくって能力を発動した。


「『不明伝説シークレットレジェンド』再現開始」


 その後ろで、ヒョウも中国拳法のような構えを取って能力を発動した。


「行くぜ灼熱蜂! 『豹変熱殺パンサースティンガー』!!」


 ヒョウの両手が超高温になったのを見て灼熱蜂は確信した。


 どうやら、自分の能力と相手の能力は同じらしい。


 ヒョウが灼熱蜂の事を同類だと言ったのは、仕事のプロとしてだけじゃない。能力そのものも同じだったようだ。


「あぁ、俺に勝ったらチャラにしてやる『灼熱燃焼バーニングエンジン』発動!」


 聖夜の夜に、告死蝶と中国の闇組織『赤龍』の対決が始まった。

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