第39話「メリークリスマス!」

 一週間後のクリスマス当日。


 毎年、私は星音と二人で過ごしてた。


 五年前までは、お母さんとお父さんが居たが、私達二人を残して、両親は失踪して居なくなった。


 かと言って、私達を置いた両親が憎いかと言われたら、そうではない。


 毎年、星音と過ごすクリスマスは楽しかったが、今年はいつもと違う。


 イエネコの四人や、中国から来たパンダちゃん、色んな出来事があって、色んな人達と出会えた。


 こんなに賑やかなクリスマスは生まれて初めてだった。


 なので、私は気合いを入れた。


♡♤♧♢


「ほっほっほっ、サンタさんの代理で来た『ツキネクロース』じゃよ!」


 そう、今日の私はサンタさんの格好をして、星音、イエネコの四人、パンダちゃんの前に現れた。


 何せ、今日でパンダちゃんと、お別れだから気合いを入れたのだ。


「すごーい! なんでサンタさんの代理で来たの?」


 パンダちゃんの疑問に私は事前に用意したセリフを読み上げた。


「ほっほっほっ、サンタさんは、世界中の子供達に夢と希望を与える為にブラックな仕事をしてるのじゃよ」


「そ、そんな、サンタさん、頑張りすぎじゃない?」


「ほっほっほっ、案ずるな。だからツキネクロースが来たのじゃよ」


 私はプレゼント袋からパンダちゃんが、中国から遠路遥々えんろはるばるやって来て探していた例の物をプレゼントした。


「ほっほっほっ、良い子にしていたパンダちゃんにツキネクロースからのプレゼントじゃ」


 パンダちゃんが目を輝かせてプレゼント箱を受け取ると、パンダちゃんは箱を開けて中身を見た。


 そう、眠理ちゃんから貰った『黒翡翠』と言う宝石を渡したのだ。


「こ、これが黒翡翠! これでボスも喜んでくれる!」


 そう、パンダちゃんは、ボスと言う人を喜ばせる為に黒翡翠を探しに日本に来たのだ。


 それはパンダちゃんの願いじゃない。


「ほっほっほっ、実はまだプレゼントがあるのじゃよ。これは、私達と楽しく過ごした記念のプレゼントじゃ」


「え、なになに?」


 パンダちゃんに渡したのは、私達と共に過ごした日々の写真が収められたアルバムとメッセージを渡した。


 正直、中国語に翻訳するの大変だったけど、メッセージには、こう書いた。


 ーーパンダちゃん、この一週間、私達と過ごしてくれて、ありがとう! 中国に帰っても私達の絆は無くならないよ!


 そのメッセージを読んだパンダちゃんが涙を流した。


「う、うぇぇぇ! 本当は月音達と別れたくないよぉ! でも、ボスが中国で待ってる。あの人を喜ばせるのが、私の役目……だから、機会があったら会いに行くね!」


 こうして、私達は盛大にクリスマスを楽しんだ後に、パンダちゃんは中国に帰った。


♡♤♧♢


「ふぇぇ、黒翡翠渡したら、ボスにもう一度だけでも日本に行けるように頼めないかなぁ?」


「心配するなパンダ。我等がボスの野望が叶ったら、世界そのものが我々のものだ」


 私が路地裏を歩いていると、一週間前に逸れたヒョウが待っていた。


「しかし、パンダ。俺が思ってる以上に残酷な方法を使ったな」


「え?」

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