第37話「帰ったらパンダが居た」

「……誰、この子?」


 僕が帰って来ると、知らない女の子が僕のパジャマを着て僕のベッドで寝ていた。


「星音様、この子はパンダさんと言って、中国から来たらしいです。なんでも今朝、月音様が通学路で倒れてるのを発見して、私達四人がパンダさんの世話をしたのです」


 うそーん、中国の闇社会のトップである『赤龍チーロン』の最強戦闘員じゃん。


 なんでそんな奴を諜報員として送ったの?


 偽装?


「むにゃむにゃ……すぴー」


 こうして見ると、最強の戦闘員に見えないのが不思議。


 しかし、非常にまずい。


 もしも姉さんが黒翡翠病患者だとバレたら、イエネコの四人では対処できない。


 告死蝶に連絡して救援を呼ぶか? いや、変なアクションをしたら怪しまれる。


 ここは様子見するしかないか。


♡♤♧♢


「ほうほう、パンダさんは黒翡翠と言う宝石を探しに日本に来たんだね?」


「うん! そうなのだ! でも手掛かりなさすぎて落ち込んでる。はぁ、ボスにナデナデして貰う予定だったのに」


「あ、じゃあ代わりに私がナデナデしようか?」


「マジで!? 月音優しいな! イエネコの人達も星音も優しいし! 私この家に住みたい!」


 これ以上家族を増やすな! てか、立場的に僕達は敵同士だろ!


 なんだろう、このバレそうでバレない緊張感は。


 まさか、緊張してるのは僕だけ?


「星音様、汗をかいてますが、大丈夫ですか?」


「あ、あはは、ちょっと暖房が効きすぎてるかなぁ?」


 イエネコの四人は、僕が告死蝶のボスである事は知らない。


 そして、目の前のパンダも知らない。


 この状況を危険視してるのは、この中で僕だけらしい。


 そんな中、パンダが僕に話しかけてきた。


「しかしなぁ、星音の銀髪見てたら思ったのだ」


「え?」


「なんか黒色も足したら、動物のパンダみたいだな。私とお揃いになるね!」


「……あ?」


 ちょっとキレかけた。敵とお揃いなんて嫌だわ!


♡♤♧♢


「うおー! これがゲーム! すごいのだ!」


「パンダちゃんやるね! 格闘ゲームなら負けないよ!」


 なんで月音姉さんと仲良くなってんだよ! 僕から弟の座を奪って姉さんの妹になるつもりか!


 ヤバい、この状況がいつになったら終わるんだ?


 僕だけがハラハラしていると、ラグドールがパンダに話しかけた。


「パンダさん、お仕事大変だと思いますし、しばらくは我が家を拠点にするのはどうでしょう?」


「え!? 良いのか? ……で、でも、月音達は優しすぎるからなぁ、甘えてばかりなのも申し訳ないし」


「じゃあこうしましょう、私達と家事を手伝いながらは、どうですか? それなら罪悪感は無いと思いますが」


「そ、そうか……うん、わかった! よろしくな!」


 よろしくするなよ!


 てか、なんで姉さんと密着しててバレないんだよ……段々とムカついてきた。


 僕は姉さんの隣に座って無言で姉さんの肩に頭を乗せた。


「あれれぇ? もしかして星音ヤキモチかな?」


「そうですよ(キレ気味)」


 こうして、また家族が増えた。


 しかも敵だけど。

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