第34話「変化する世界」

「ほーれほれシャムちゃーん、猫じゃらしだよー」


「にゃー! 月音様ー! シャムは猫じゃらしに弱いのだー!」


「あ、ずるい! 月音様、私にも猫じゃらしを!」


 姉さんとイエネコの4人のメンバーが遊んでるのを見ながら僕は思った。


 慣れって怖いな。


 いや、イエネコと呼ばれてるけど、彼女達は女装をした男の娘だし。


 と言うか、なんでコイツら普通にウチで家族同然に過ごしてるのだろうか?


 家事は全てキジトラ、サビネコ、ラグドール、シャムがやってくれるのはありがたいけど、コイツら僕と同じで未成年だよね?


 未成年の男の娘達が家でメイドのように手伝ってくれるとか……え? ここラノベの世界だったの?


 僕は段々と現実とフィクションの区別が付かなくなってきた。


♡♤♧♢


『はぁ、そんなラノベみたいな生活を半月もやってたのですね。ふーん』


「……秤蜘蛛、もしかして怒ってる?」


『怒ってませーん。ちっともうらやましいなんて思ってませーん』


 あ、これは怒ってる。相当に怒ってる態度だ。


『ふふふ、こっちは連日7つの巨大組織の動向を監視する日々が続く中、星音様は、さぞや楽しいラノベライフを送ってるようで何よりです。ふふふ』


「ボスとして命じる。休め秤蜘蛛」


『かー! 休みたくても被害を最小限に抑える方法を模索してる最中なんですよ! てか朗報です! それぞれの組織そのものが各国から動けなくて、複数の諜報員を日本に送ってる状況です! つまりですよ、その諜報員を全員ぶっ倒せば、しばらくは落ち着きます!』


「頼むから休んでくれ秤蜘蛛、相当ストレス溜め込んでるだろ?」


『きぇぇぇぇ!』


 いつもの冷静な秤蜘蛛じゃない。それだけ切羽詰まった状況なのは分かってるが、そうか巨大組織と言っても、各国の法律とかあるし、更に日本は法治国家だから安易に暴れる事も攻める事もできないのか。


 130年前よりも法律や倫理観が厳しい時代になったからな。


 せいぜい諜報員を送るのが限界か。


 それだけ分かっただけでも安心だ。130年前のような惨劇は起こらないだろう。


「分かった。その諜報員を僕達が倒すから……秤蜘蛛、今すぐパジャマに着替えて寝なさい!」


『分かりました! おやすみなさい! ご武運を!』


♡♤♧♢


「ほうほう、ここが日本ピンイン? 何アレ? 電線が沢山ある」


「パンダ、我々の目的は分かってるな?」


「分かってるよ。この国の何処かに黒翡翠が居るんでしょ? うしし、私達が先に奪ってボスに献上しようよ。そしたらボスが私をナデナデしてくれるかも!」


「うむ、ボスが中国から動けない以上は、我々が動くしかないな」


「ところでさ、ヒョウ。任務の前に観光しちゃダメ?」


「ダメだ」


「ケチー! 中国のラーメンと日本のラーメンの味比べするのが夢だったのにー!」


「任務が終わってからで良いだろ? はぁ、結局我々二人しか日本に来れなかったか……まぁ、我々が負けた程度でボスは諦めないがな」


 中国からの刺客が日本に上陸したが、この二人はまだ黒翡翠がどこに居るのか分かってない。


 12月の半ば、告死蝶と中国の組織が激突しようとしていた。

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