第28話「偽りの猫」
まず、さっきのキジトラさんって、女装伯爵はこのお店の人が作った作り話だと言ったし、女装伯爵が犯行を繰り返す事に抵抗感を感じてた。
でも、キジトラさんは最初にこう言った。
ーーこれぞ都市伝説効果!
困ってると言ってたのに、なんで喜んでたの?
そして、夢ちゃん達の事情を聞くたびにキジトラさんは、困ったフリをするようになっていた。
最初は喜んでたのに、なんで夢ちゃん達の事情を聞いた途端に嘘をついたのだろう?
ここからは夢ちゃんの憶測だけど、この店は女装伯爵のお陰で売り上げが伸びたと言っていた。
つまり、わざとネットに都市伝説を作って、女装伯爵を真似た犯人をでっち上げて、店の売り上げに加担した自作自演なんじゃないかな?
夢ちゃんの推理だと、この店と女装伯爵は共犯者と見て良いと思う。
♡♤♧♢
私は苦手なコーヒーを飲みながら真剣に夢ちゃんの推理を聞いて思った。
なるほど、わからん。
小学生に推理で敗北する高校生のお姉さんとか恥ずかしすぎるだろ。
つまり整理すると、女装伯爵は、この店の誰かがやったのか?
売り上げを伸ばす為に?
いや、小学生の夢ちゃんでも分かることが警察が分からないわけないしなぁ。
…………コテリン!
「あ、もしかして、お店の関係者全員が女装伯爵そのものなのかな?」
つまり、アリバイを全員口裏を合わせて作った組織的な犯行なのではないか?
私達は女装伯爵を単独犯だと勘違いしていたが、本当は組織的な犯罪だったのではないだろうか?
……ん? そうなると、私達ヤバくない?
「お姉さーん、気付いちゃダメな事に気付いちゃったねぇ」
気が付いたら、さっきまで仲良く話してたはずのキジトラちゃんが、なんか怖い笑顔を浮かべながら立っていた。
「あ、その、キジトラちゃん? お金払うから見逃すのは……ダメ?」
「ダメでーす」
キジトラちゃんの手にはスタンガンが握られていて、私の首筋に当たった。
♡♤♧♢
ありゃー、私は知らない鉄の部屋に監禁されてしまった。
しかもご丁寧に手足を縛られてるし。
星音と夢ちゃんは大丈夫だろうか?
扉の向こうから、キジトラちゃんが入って来た。
「お姉さんが真相に辿り着いた以上は、ただで帰す事ができなくなっちゃったなぁ」
「キジトラちゃん、君はいったい何者なんだ?」
「もう隠す必要性はないか、我々は女装信者を増やす宗教集団。その名も『イエネコ』我々は国際レベルで未だに問題視されてるジェンダー問題に立ち向かう為に作られた組織なのです」
「……え? 犯罪組織じゃないの?」
「我々は、そんな物騒な真似はしません。あくまでも女装の魅力を多くの人達に伝えたいだけです……でも、一目で分かりました。お姉さんは、こちら側の人間だと言う事が」
「う、否定はしないけど、ところで星音と夢ちゃんは大丈夫なの?」
「あの子達は大丈夫です。今は私達の信者が可愛がっている頃です(意味深)」
なんてこったい、女装伯爵の正体が宗教組織そのものだったとは。
これを私一人に依頼した錦先輩に戻ったら文句言ってやろう。
「さて、私の正体を明かしました。次はお姉さんが明かす番です」
「何の話?」
「とぼけなくても良いです……本当は、女装した弟さんと一線を超えたい。だが理性では否定してますね?」
「っ!」
目の前のキジトラちゃんを見て確信した。こやつは強敵だと。
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