第25話「えぇ? 都市伝説ぅ?」

 私は入学してから初めて生徒会室に来たが。


 四方八方に居る生徒会のメンバー達の視線を一身に受けながら私は思った。


 何が始まるのです?


「ふ、急に呼び出してしまって緊張するのは無理もない。お茶の一つすら出せなくて申し訳ない」


「え、えーと、その錦先輩? 私のような普通の後輩に、その、何のご用でしょうか?」


「まずは、簡単な質問をしよう。君は男の娘が好きかい?」


「もちろんです!」


 私の発言を聞いてか、生徒会全員がざわついていた。


「やはり君が適任のようだ。我々生徒会は、ある都市伝説に関連した事件解決に尽力してるところなんだ」


「都市伝説?」


♡♤♧♢


 事の発端は今月の初め、一人の生徒が失踪事件を起こした。しかし、三日後に生徒が戻ってくると、変わり果てた姿になっていた。


 なんと、女装癖に目覚めて戻ってきたのだ。


 事件発生前までは普通の男子学生だったが、彼は『女装伯爵』と言う人物に出会い、女装の素晴らしさに目覚めたらしい。


 同様の事件が今月だけでも三件発生した。


 どちらも女装伯爵の仕業らしい。


 警察が女装伯爵の調査をしたが、進展はなかったそうだ。


 そもそも女装伯爵とは都市伝説のような存在だ。


 神出鬼没な存在で、夜に一人で歩いていると、美しい女装の姿で現れて、人間を誘惑して心を奪うそうだ。


 女装伯爵の正体が人間なのか妖怪なのか分からないが、この噂はネットの書き込み板に投稿された何の根拠もない作り話のはずだった。


 だが、実際に我が校の生徒が四人も女装に目覚めて、女装以外の服装を拒絶するようになった。


 彼等が出会ったと言う女装伯爵とは、この都市伝説を真似した模倣犯だと思うが、このまま放置してると我が校の生徒達が次々と犠牲になってしまう。


 何としても、この事件を解決する為に君を選んだのだよ水無月 月音くん。


♡♤♧♢


「……」


 えぇ? 都市伝説ぅ? しかも女装伯爵ってなんだよ。


 え、まさか、私が男の娘好きだと言う噂が生徒会にまで届いてたの?


 恥ずかしい!


「その、錦先輩、そう言うのは警察の仕事では?」


「ごもっともな意見だ。だが、警察からは何の進展も無い以上、我々が動くしかない。男の娘好きの君の知識を活かして、女装伯爵の正体を突き止めてくれないだろうか?」


「……帰っちゃダメですか?」


「ふむ、確かに何も報酬が無いとモチベーションが湧かないだろう。君は弟の女装姿を校内で布教してるらしいね」


「それに関しては、すみません!」


「いやいや、責めてはいないさ。むしろ自慢の弟を愛してる素晴らしい姉弟愛だ。僕は感激したよ」


 うわぁぁぁ! 錦先輩の屈託の無い笑顔が眩しすぎる!


「ではこうしよう。報酬として、君の弟さんにメイド服を送るのはどうだろうか?」


「わかりました。事件解決に尽力します」


 判断が早い!


 こうして、私は女装伯爵の正体を探る事になった。


 期末テストが近いのに。

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