第23話「そして一時の平穏」

 文化祭が終わった後の夜だった。


「ふぅ〜、お姉ちゃん、お風呂上がったよぉ」


 風呂上がりの星音がタオルを首に巻いてやって来た。


 汗だくな星音も良かったが、風呂上がりのシャンプーの匂いがする星音も良き良き。


「ねぇ、お姉ちゃん、今日の文化祭楽しかった?」


「うん! とっても楽しかった!」


♡♤♧♢


『うん! とっても疲れました!』


 ビデオ通話の向こうの秤蜘蛛が珍しく疲れ切っていた。


 どうやら、今回の闇組織との対決は表向きにはバレなかったらしい。


 いや、灼熱蜂がド派手に炎が爆発する音を出したり、眠葉虫とリカオンの対決で旧校舎の窓ガラスが全部割れたり、酔蜚蠊がハイエナ相手に竜巻を使ったり、秤蜘蛛が体育館で派手に能力を使ったのに。


 これらが全部バレてません。


 今回は国連と共同でやった作戦だけど、バックがデカいと隠蔽工作がこんなにもできるんだぁ。


『はぁ〜、カッコつけて体育館の天井にぶら下がるんじゃなかった。お陰で頭に血が昇りました』


「なんであんな登場の仕方したの?」


『まぁ仮にも蜘蛛のコードネームを持つ者なので、スパイ◯ーマンみたいな事したかったのです。あ〜でも僕はスパ◯ダーマンのように糸出せないしなぁ、ス◯イダーマンになりたかったなぁ』


「どんだけ◯パイダーマン推しなんだよ。アメコミの見過ぎじゃない?」


『まぁ冗談はさておき、これでしばらくは平穏に過ごせますよ? 今回の闇組織制圧作戦の報酬で国連から素晴らしいチケットを貰いましたし。それに周囲を調べましたが、しばらくは月音様を襲う犯罪者は出現しないでしょう。いやー、やっと休める! 残業は健康に対する害悪! なので僕は寝ます! おやすみなさい!』


 今回は珍しく秤蜘蛛の方から通話を切った。


 久しぶりに現場に出たせいで疲れてるのだろう。


 てか、僕も疲れた。文化祭の間ずーと緊張してたから。


 僕も寝るか。


♡♤♧♢


「お、お姉ちゃん、僕疲れたから、一緒に寝ても良い?」


 シュワット!? 星音、いったいどうしたと言うのだ?


 まずい、気がたかぶる。


 私の同意も聞かずに星音が私の布団の中に入って来て、そのまますぐに寝た。


「すぅー、すぅー」


 あわわ、星音の寝息が、すぐ隣で聞こえる!


 星音を襲いたい衝動が湧いてきたが、星音の安らかな寝顔を見てると、自分自身の欲望に罪悪感を感じたので私も大人しく寝ることにした。


 しかし、やっぱ可愛いなぁ! 私の弟!


 私はドキドキしながら眠りについた。


♡♤♧♢


「校内で不審な出来事が多発した? 文化祭の出し物じゃなくて?」


「その、目撃者も居ないので、何とも言えないのですが、花火みたいな音がしたとか、ガラスが割れる音がしたとか、竜巻のような音がしたとか、それらが全て文化祭の出し物と言う事になってるのですが、私達『生徒会』が把握してる範囲で、そのような出し物はなかったはずなのですが……」


「まいったな、こっちは例の都市伝説の対応に追われてるのに、一部の生徒が馬鹿騒ぎしたのか? いや、外部の人間も来るイベントだから、外部の仕業か?」


「その、一応は問題にはなってないのですが……話を戻しますと、やはり例の都市伝説に対抗できる生徒は彼女しか居ないかと」


「水無月 月音か。やはり彼女に頼るしかないのか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る