第21話「流星万華鏡」

 相手はプロの傭兵集団のボス『ケルベロス』。


 中学生の僕が勝てるか分からないが……月音姉さんを守る為に全力を出す!


 僕はクラウチングスタートのように片膝を付いて両手を床に当てた。


 ごめん、力を貸してくれ、みんな!!


「『風読加速エアドライブ』×『重力侵犯グラビティフィールド』発動!!」


 No.9酔蜚蠊と、No.K(キング)滅針蟻めつはりありの二人の能力を組み合わせた重力を無視した最速のダッシュを発動して、僕はケルベロスに頭突きをした。


 今の僕は弾丸並みの速度にまで達してケルベロスの腹部に僕の頭突きが深々と刺さったが。


「軽いな」


「っ!」


 ケルベロスの機械の腕が変形したかと思うと機関銃に変形した。


 僕は慌てて風読加速の能力で弾丸を全て回避したが、やはりダメだ。


 本物の風読加速のような性能が出せない。


 銃撃が止んだのを見てから、僕は再び別の能力を発動した。


「『灼熱燃焼バーニングエンジン』×『脳喰洗脳ブレインハッキング』発動!」


 今度はNo.8灼熱蜂とNo.3夢蟷螂の能力を同時に発動した。


 本物の脳喰洗脳より性能が劣るが、数秒だけ相手の動きを止められる。


 僕は灼熱燃焼の力で空中で高速に前方回転を何度も繰り返した後に、空中で全体重を乗せたかかと落としをケルベロスの脳天に浴びせたが。


「……」


 効いてない!? コイツの体どうなってんだよ!


 僕は慌てて、もう片方の足でケルベロスの顔面を蹴った後に着地をした。


♡♤♧♢


 解説の必要があるだろう。


 なんで星音は配下である告死蝶のメンバーの能力が使えるのか。


 これが騙蛾のコードネームを持つ者達が代々受け継いで来た能力。


 その名は『流星万華鏡カレイドスター』。


 そもそもな話、蛾って戦えるの? なんで蛾のコードネームを持つ者が告死蝶のボスなの?


 と言う今更な疑問に回答しよう。


 蛾と聞くと蝶よりも地味なイメージがあるが、実は自然界に存在する蛾の種類は蝶よりも多い。


 その差は30倍、圧倒的に蛾の方が多い。


 でも蝶の方が綺麗と思われるが、調べたら蛾もそれぞれ鮮やかな色味をしている。


 特に蝶も蛾も共通してるのが、両者は高度な擬態能力を持ってる事。


 彼等は何にでも擬態する、羽にある眼状紋がんじょうもんは鳥の天敵である蛇の目に擬態してるし、中には完全に木と同化してる蛾も居る。


 ムラサキシャチホコと言う蛾も居るのだが、検索したら分かるけど、どう見てもカールした落ち葉にしか見えない。


 蝶や蛾の鮮やかな色彩を持つ羽は彼等を天敵から身を守り繁殖の手助けをしてくれる。


 蝶と蛾は同じチョウ目の昆虫なので、その境界は曖昧だが、共通して言えるのが、彼等の擬態能力の高さは、まさに自然界が生み出した芸術作品とまで言われる程に多彩である。


 ただ、作者が知らないだけかもしれないが、蝶や蛾の擬態能力はどうやって身に付けたのか分かってない。


 ここからは星音の流星万華鏡の能力の説明をする。


 この能力は告死蝶のメンバーが持つ特殊能力をひたすら観察して、星音自身が擬似再現する能力である。


 しかし、欠点として本家よりも性能が落ちる、当たり前である。


 告死蝶のメンバーの能力は、それぞれの経験や過去や訓練で身に付けた特殊な能力。


 それを13人分の能力を擬似再現してるだけなのだ。


 つまり、騙蛾の能力は告死蝶に擬態する能力である。


 そして、星音は本家よりも劣る能力を補う為に二つの能力を同時発動する事で、欠けてる部分を補っている。


♡♤♧♢


「ふん、やはり騙蛾は厄介な存在だ。まだ俺の知らない能力を隠しているな?」


 僕は何も答えられなかった。これ以上は手の内を明かせないからだ。


「しかし、もしかしてお前は……能力を二つ同時にしか発動できないのか?」


「!!」


 やはり、先代の騙蛾を知ってるケルベロスにはバレてしまったか。


 僕の流星万華鏡は、まだ未完成の能力だと言う事が。

 


 

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