第7話「夢見る捕食者」
「夢ちゃん、一緒に滑り台を滑ろう!」
「あぅ、ちょっと怖いかも」
「大丈夫大丈夫、ちゃんとクマさんを抱きしめて、そしてお姉ちゃんが夢ちゃんを抱きしめてあげるから」
「そ、それなら行けるかも」
「それじゃ行くよ……それー!」
「あわわわわ」
月音と夢ちゃんの二人が滑り台を滑ってる光景を見てる時に、最初に気が付いたのは星音だった。
誰かがこちらを見ている。しかも、この視線は
かなりの常習犯と見た。どうやらプロらしい。
人間を商品としてしか認識できない外道。
かと言って表立って姉である月音の前で騙蛾としての本性を表すわけには行かない。
そこで、星音は夢ちゃんに向かって言った。
「ねー夢ちゃん、そろそろお腹空いてない? 近くに美味しいものがあるよ」
それが、目の前の夢ちゃん、いや彼女の正体は告死蝶No.3『
つまり直訳すると「こっちを見てる外道が居るから夢蟷螂として排除しろ」と言う告死蝶のボスである星音の命令だった。
それを聞いた夢蟷螂は、幼い瞳から捕食者の目に変容した。
「? どうしたの夢ちゃん?」
何も知らない月音が心配そうに夢蟷螂を見るが、夢蟷螂は笑顔で月音に言った。
「ありがとう、月音お姉ちゃん。夢ちゃん、もう大丈夫だから、お家に帰るね。星音ちゃんもクマさんをくれて、ありがとう! また遊ぼうねー!」
夢蟷螂は二人に手を振りながら去って行った。
「不思議な子だったなぁ……あぁぁ、でも幼い子にもお姉ちゃんって言われるの良いなぁ!」
「あはは、相変わらずだね、お姉ちゃん」
♡♤♧♢
「ん?」
人攫いの男が三人の少女を値踏みしていると、三人の内の一人であるエプロンドレスを着た小学生ぐらいの女の子が、クマのぬいぐるみを抱きしめながら、こちらに近付いて来た。
バレた? いや、こんな子供が自分の正体に気付くわけがない。
「ねぇ、お兄さん」
女の子がこちらを見てくる。女の子と目が合う。すると女の子はゆっくりと迫って来た。
「ねぇ、夢ちゃんだけ見て、お願いだから、夢ちゃんだけを愛して」
この子供は何を言ってるのだ?
その瞬間だった。
「ん? ぐ、ぶぅ!?」
頭に激しい頭痛が走ったかと思うと、男は倒れてしまい、体が動かなくなってしまった。
何が起こった? 何をされた?
男が困惑してると、女の子は男を見下ろしながら喋り続けた。
「悪ーい悪ーい大人は夢ちゃんの夢の世界で優しい大人になって帰って来てね」
それを最後に、男の意識は消滅した。
♡♤♧♢
解説をすると。
これが夢蟷螂の能力『
対象と目が合うだけで発動する能力で、相手の視覚を通して電子信号を送り、相手の脳をハッキングする能力である。
夢蟷螂に洗脳された人間は、夢蟷螂が送った電子信号の内容通りの行動をするようになる。
今回は人攫いの男を気絶させただけだが、夢蟷螂が本気を出せば、もっと複雑なハッキングを可能にし、対象を思い通りに洗脳できるが。
残念ながら夢蟷螂はまだ子供。大人のような複雑な洗脳は難しく、今の夢蟷螂は気絶か数分間だけ夢蟷螂の命令通りの洗脳を可能にするだけ。
この能力は、まだまだ未熟で、もしも夢蟷螂が大人になったら、より高度な洗脳ができるようになる。
話は変わるが、メスのカマキリは交尾中にオスのカマキリの頭部だけを捕食するらしい。
理由は諸説あるが、オスの頭部を卵の栄養源にする為なのか、しかしそれだと頭部しか食べない理由が説明できない。
このメスのカマキリがオスのカマキリの頭部だけを食べる行為は未だに謎に包まれている。
夢蟷螂の能力が、まるでメスのカマキリの共食い行為に似てる事から、彼女にはカマキリのコードネームを与えられたのだ。
♡♤♧♢
「……ふぇぇ、やっぱり夢ちゃん、この能力嫌だなぁ。目が合っただけで人が倒れるもん。で、でも秤ちゃんのお陰で能力のオンオフができるようになったもん!」
『見事だねー夢蟷螂。僕と能力の特訓をしたかいがあるね! さてと、調べた限りだと、その男はかなりの手練れのようだ。相手が子供だと思って油断してくれて良かったよ。夢蟷螂に戦闘能力なんてないもんね』
「うぅ、事実だけど、酔ちゃんみたいに『エアドライブ』!! みたいなカッコいい技が欲しかったなぁ」
『若いねー。さてと、月音様と星音様のデートは次で最後だし。もう脅威となる相手は居ないだろう。夢蟷螂はお家に帰って、ちゃんとご飯を食べるんだよ』
「うん! じゃーね秤ちゃん!」
秤蜘蛛との通話が終わった後に、夢蟷螂は自分が倒した男にしゃがみ込んで言った。
「え、えーと、ここは蟷螂としてカッコよく……ご、ご馳走様でした!」
顔を真っ赤にしながら夢蟷螂は自宅に帰った。
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