第3話「緊急事態発生!」

「星音ー!」


「ん? どうしたのお姉ちゃん?」


 深夜に私はノックもせずに星音の部屋に入ったら、そこにはパジャマ姿で眼鏡をかけた愛おしい我が弟が勉強していた。


 はい、眼鏡萌えキタァァァ!!


「明日は予定ある?」


「うーん、特に無いけど、どうしたの?」


「え、へへ、明日さぁ、お姉ちゃんとデートしない?」


♡♤♧♢


 僕は姉さんが居なくなった後に告死蝶の緊急回線を開いた。


「緊急事態発生だ、各員状況を報告せよ」


『こちら秤蜘蛛、どうしたんです? こんな夜中に?』


「姉さんと明日デートする事になった」


『え、まさか、OKしたのですか? 星音様?』


「した」


『……お言葉ですが、状況分かってます?』


「分かってるよ。だけど断れないだろ! 変に怪しまれる訳にはいかないんだからさぁ!」


『うーん、言い訳にしか聞こえませんが、月音様は今は非常に危険な立場にあります。先日は大学生グループの犯行集団に誘拐されかけましたし。それに月音様が黒翡翠病患者だとバレたら、闇組織とかに狙われる立場になるのですよ? あんまし表立って行動しない方が……』


「あーもう、説教なら後でいくらでも聞いてやる! で? 動ける告死蝶のメンバーは何人居るの?」


『そうですねぇ、今使えるのはNo.3『夢蟷螂ゆめかまきり』とNo.9『酔蜚蠊よいごきぶり』の二名しか居ませんね。あ、僕は基本的には戦えませんので除外してください』


「つまり、姉さんの護衛ができるのは、僕を含めて三名だけか。夢蟷螂と酔蜚蠊と連絡を取れないか?」


『はーい、少々お待ちを』


 五分後。


『あっははは! 夢蟷螂はお子様なので、もう寝てますし、酔蜚蠊はこれから朝まで同僚と飲み歩くらしいです』


「自由すぎないか!?」


『まぁ、黒翡翠病患者なんて世界に二人しか居ませんし、もうメンバーの皆さんの緊張感がゆるゆるなんでしょう。ここは一発、星音様がボスとしてガツンと他のメンバーに喝を入れる時ですよ!』


 あーもう、僕がボスとしての威厳が無いのだろうか? そもそも、もう一人の黒翡翠病患者はアメリカのミシガン州に居て、今は骸蝿、魂蛍、哲百足の三名を派遣してるし、そもそもな話なんだけど。


 告死蝶のメンバーは、僕以外だと十三人しか居ない小規模な組織だし。組織が小さいからこそ、中学生の僕が祖父の代を継いでボスになったわけだけど……まさか身内に黒翡翠病患者が出るなんて予想してなかったから、こんな事になったのか。


『まぁまぁ、そう思い詰めないでくださいよ星音様。僕は直接現場には行けませんが、常に情報網を張り巡らせていますので』


「はぁ、もっとボスとして部下とコミュニケーションを取るべきだった」


♡♤♧♢


 翌日。


「お、お待たせ、お姉ちゃん……」


 いやっほぉぉぉぉ!! 普段眼鏡をかけない星音が、私の為に眼鏡をして、大人しめの淡い色の私服に身を包んだ女装姿で私の前に降臨した! 


 私の勝利に揺るぎなし、私の敗北に未来はない。


「うぅ、そんなに見られると恥ずかしいよぉ」


 照れる星音可愛い! 鎮まれ、我が情熱!


「そっかー、じゃあ手を繋ぐ?」


「う、うん」


「さて、今日はどこが良いかなー? 星音はどこが良い?」


「僕は、ゲームセンターに行きたいな」


 はい、ここ私の心の中でテストが出ます。見た目は可憐な少女にしか見えないが、中身は男の娘。


 ゲームセンターが良き良きかー、可愛い奴めー、散財してやるぞぉー。


♡♤♧♢


「ふぇぇ、迷子になったよー、秤ちゃん助けてぇ」


『はいはい、泣かないの夢蟷螂、君は今大切な任務中なんだよ? 君の能力は確実に星音様の役に立つ。ここで星音様から信頼を獲得するチャンスだよぉー?』


「うぅ、星音ちゃんの為なら夢ちゃん頑張る……でも不安だー!」


♡♤♧♢


「ウボァー、飲み会終わった後に任務って何? こちとら表の仕事が終わってないんですけどー?」


『あははは、相変わらずだね酔蜚蠊。でもボスである星音様のご意向だから、仕方ない仕方ない』


「てかさー秤蜘蛛、アンタ本当は戦えるでしょ? いつもいつも高みの見物しやがって、ちょっとは現場に出たら?」


『嫌でーす。この後は推しの配信が始まるので、何かあったら連絡するよー』


「あーそうかいそうかい、ダルすぎる。んじゃまぁ、告死蝶の最初のミッション『月音様のデートを最後まで見守り隊』を始めるけどさぁ、このミッション名を考えたの誰?」


『僕でーす』


「くはは! 帰ったら秤蜘蛛の脇腹こちょこちょしてやる!」


 こうして、告死蝶最初のミッションが始まった。

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