宝の山

 招知大学は都心の大学らしく、学舎は高層ビルになっている。入口に「招知大学」の看板が出ていないと、大学だと気が付かない。普通のオフィスビルに見えてしまう。

 学舎の八階に、教授や准教授の教授室がずらりと並んでいる。エレベーターを降りて直ぐの場所に、フロア・マップが設置されている。どの部屋にどの教授がいるのか一目で分かるようになっていた。

 鷲尾教授の教授室は角部屋の広々とした部屋だった。学内で羽振りが良さそうだ。

「ああ、刑事さん」と二人を出迎えてくれたのは、まだ四十代にしか見えない若い研究者だった。鷲尾教授だ。大学の教授というと白髪の老人かオタクのような人間を思い浮かべてしまうが、鷲尾はテニスコーチのように日焼けした顔と白い歯が眩しい若々しい教授だった。

 来訪を知っていたと言うことは、祓川が事前に連絡を取っていたのだろう。この人には勝てないと宮川は素直に感心した。

「お忙しいところ、すいません。先日、電話でお伺いした話を詳しくお聞かせいただけませんか?」

「分かりました。まあ、中へどうぞ。すいません。散らかっていますが。実験室は別にあって、何時もはそこにいます。残念ながら、そちらは関係者以外立ち入り禁止になっていますので、日頃、あまり使っていない、この部屋ですいません」

 本でいっぱいだったが、綺麗に片付いていた。散らかってなどいない。「お気遣いなく」と祓川と宮川は勧められるままに、部屋の中央に据えられたソファーに腰を降ろした。

「インジウムのお話でしたね。インジウムは原子番号49の元素です。鉛や亜鉛鉱の精錬の過程で得られます。レアメタルのひとつで、枯渇が心配されている資源のひとつでもあります。レアメタルとは金や銀の貴金属以外の鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の希少金属のことで、レアアースもレアメタルの一種になります。海外ではマイナーメタルと呼ばれています。

 インジウムは液晶ディスプレイの透明電極や発光ダイオード、化合物半導体の材料等に使われています。インジウムの最大の消費国は日本なのですが、そのほとんどを中国からの輸入に頼っています。インジウムの酸化物は透明で導電性があり、産業用として様々な分野で用いられています。その研究をしているのが、うちの研究室です」滔々と鷲尾がインジウムの説明を始めた。

 祓川が「ああ、すいません。例の石川健文さんに関するお話をお願いします」と話の腰を折った。

 確かに、インジウムの解説を聞かされても分からない。

「石川君でしたね。彼はうちのゼミの卒業生です。卒業後、ナノエレという会社に推薦して採用してもらいました。ナノエレは透明電動膜をつくっている会社です。透明電動膜とは透明で電気を通すことができる薄膜のことで、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネルに使用されています。インジウムは導電性があるのに透明ですから、このタッチパネルに利用されているのです。

 石川君はナノエレの研究開発部門で働いていました。優秀な生徒だったのですが、残念ながら最近、ナノエレを辞めてしまったようです。今後の推薦を考えると、もう少し、頑張ってもらいたかったのですけどね」

 教授も苦労が多いようだ。恐らくナノエレは鷲尾の研究室のスポンサーでもあるのだろう。推薦した学生にあっさり辞められて、鷲尾もナノエレも困惑しているのだ。

「その石川さんから最近、お宅の研究室に連絡があったのでしょう?」

「はい。鉱石を持ち込んで来て、インジウムが含まれているかどうか検査して欲しいと言うことでした」

「インジウムが含まれていたのですか?」

「ありました。インジウム銅鉱でした。何処で見つけたのか尋ねたところ、地元の山で見つけたと言うことでした。彼の話によると、そこにはインジウム銅鉱が大量にあると言うのです。いやあ、驚きましたね。うちの研究室にいた石川君だからこそ、発見することが出来たのだと思います。かつて北海道に豊羽鉱山という鉱山があって、世界最大の産出量を誇ったことがあります。現在では堀り尽くしてしまって、閉山していますが、ひょっとすると、豊羽鉱山に匹敵する埋蔵量があるかもしれません」

「宝の山だと言うことですか?」

「インジウム銅鉱が見つかったからと言って、採掘できなければ話になりません。地中深く、埋蔵されているような場合、採掘には技術的な問題が伴います。豊羽鉱山も掘り尽くしたと言っても、鉱脈は更に坑道の深部へと続いているのですが、現在の採掘技術では不可能ですから。その辺を石川君の協力のもと、調査を始めたばかりです。宝の山かどうかは、今後の調査次第ですね。はは」

「ほう~どんな感じですか?」

「はい。期待できそうですよ。簡単に言うと純度が高く、採掘が楽なレアメタルの鉱床が見つかりそうです」

「その鉱床はどの山にあるのですか?」

「南洲さんという方が所有する石川山という山です」

「なるほど~なるほど~石川山ですか。そのことは南洲家の人間は知っているのですか?」

「はい。そのはずです。石川君の親戚らしくて、採掘に関しては、話を通してあるから大丈夫だと言っていました。まだ調査は始まったばかりです。これからですよ。刑事さん、正式な発表はまだ随分、先になります。それまで、決して口外しないで下さい」

「分かっています。捜査機密です。外部に漏らしたりすることはありません」

 二人は丁寧に礼を述べて、鷲尾の教授室を辞した。祓川が仕入れた面白い情報というのは、意外にも宝の山の話だった。

「二束三文と言われた山は実は宝の山だった訳ですね。殺人の動機として十分ですね。石川は本家の名誉と宝の山の両方を手に入れたかった。それには守弘さんが邪魔だった。守弘さんが、宝の山の存在に気が付く前に、始末して仕舞いたかったのではないでしょうか?」車で二人切りになると、こらえ切れなくなって宮川は一気にしゃべった。

 宮川の質問には答えずに、祓川は「町田だ。町田に向かってくれ」と言った。

「町田ですか? 町田に何があるのですか?」

「石川が南洲氏を殺害した真の目的が分かった。やつは宝の山が欲しかった。だから、南洲家の当主となって、山を相続する必要があった」

「ええ、僕もそう思います」

「恐らく、宝の山の話は、まだ一族の人間には話をしていないはずだ。これで、一族の結束を崩すことが出来るかもしれない。一番、弱いところを攻めるのだ」

「一番、弱いところですか?」

「篠村浅子だ。彼女を突き崩して、突破口を開くのだ」と祓川は言う。


 二人は町田にある篠村家を目指した。

 篠村家は町田市郊外の集合住宅内にあった。祓川は篠村家の所在地まで調べていた。入口の管理棟で警察手帳を見せて来訪目的を告げると、管理人が「篠村家は三棟の6Cですよ」と教えてくれた。

 指定された駐車場に車を停め、三棟へと歩いて行った。

 昼間とあって住宅内を行き交う人間は買い物袋を下げた主婦ばかりだ。昼間から住宅地をうろついている得体の知れない男たちを、住人は奇異な眼差しで見ながらすれ違って行った。

 篠村浅子は篠村幸太郎の妻であると共に、殺害された守弘の姉に当たる。南洲家の関係者で、守弘の死を最も嘆いている人物であろうことは、容易に想像できた。祓川が「一番、弱いところ」と言うのも頷けた。

 篠村幸太郎、浅子夫婦には幸一と美鈴という名の子供がいる。武蔵野署の刑事が事情聴取を行っており、それによれば、長女の美鈴が夏風邪を引いて熱を出してしまったので、看病のため、則天の四十九日の法要を欠席したと言う。事件と無関係であると思われ、その後、浅子からはろくに事情聴取が行われていなかった。

 美鈴の夏風邪は癒えたようで、元気に登校している。孝太郎は仕事だし、二人の子供が学校に行っていない昼間は浅子一人のはずだ。

 突然、刑事を迎えて、明らかに浅子は動揺していた。「家に訪ねて来ても何も話すことはない」というオーラを漂わせながら、二人を迎えた。

 実際、二人を応接間に招き入れると、お茶を出す為に直ぐに席を外し、なかなか戻って来なかった。やっとお茶を煎れて戻って来たかと思うと、「私は事件の日、宗家にはおりませんでした。何も知りません」と硬い表情で宣言すると、後は下を向いて押し黙ってしまった。

 祓川の攻撃が始まる。

「奥さん、弟さんは何故、殺されたのだと思います?」

「さあ、存じません。私は何も知りません」

「弟さんが殺害されているのですよ――⁉ 知らぬ存ぜぬで、それで良いのですか? 南洲則天さんの事故死に弟さんが関与していて、それを恨んだ人間の犯行ではないかという話があることをご存じですか?」

「守弘は人を殺すような人間ではありません。則天さんは事故死です」

「ご両親はご健在なのでしょうか?」

「ええ、千葉に実家があって、そこで元気にしています。一昨日、実家に顔を出して来ました。今度の件では、母がとても気落ちしていて見ていて辛い程でした」

 浅子は母親の様子を思い出したのだろう。「失礼します」と席を立つと、食卓の上に置かれたバッグからハンカチを取り出してそっと目頭を押さえた。

「弟さんは、どういう方だったのですか?」

「あの子は学生時代からコンピューターに詳しくて、所謂、オタクと言うんですか? そういう人達とはちょっと違うように思うのですが、パソコンでゲームを作って遊んだりしていました。大学を卒業すると、仲間と一緒に会社を立ち上げて、私にはよく分かりませんが、大手ゲーム会社の下請けみたいな仕事を始めました」

「会社の経営は厳しい状態にあったようですね。借金もあったようです」

 武蔵野署の捜査によると、コジョーは数千万円の借金を抱えていた。だが、篠村によれば、「今の仕事の納品が終われば、まとまった金が入ります。大丈夫です」と言うことだったが、楽でなかったことは確かだ。

「会社のことは何も知りません」

「則天さんが亡くなれば、弟さんが南洲家の遺産を相続することになる。違いますか? 弟さんは金に困っていた。南洲家は痩せても枯れても歴史ある旧家だ。山林や田畑を売れば、結構な金になるのではありませんか?」

「弟がお金の為に則天さんを殺害したとおっしゃるのですか――⁉ あんな畑や山なんて、二束三文でしか売れません!」浅子が目を吊り上げる。

「ほ、ほう~誰がそう言っていました? それがね。そうでもないんです」

「どういうことです?」浅子が怪訝な顔をする。

「石川山って言うんですか? 南洲家と所縁の深い山。あそこにインジウムという希少な鉱物が埋まっている可能性が高いそうです。レアメタルって聞いたことありますか? そのひとつだそうです。随分、貴重なもののようですよ。採掘が始まれば、あの山の所有者は大金持ちになるでしょうね~そう言えば、石川さん、いや、南洲家当主を相続して南洲玄宗さんになったのでしたね。玄宗さん、他には何も要らないけど、石川山だけは相続したいと言っているみたいですね。弟さんが生きていれば、あの山は弟さんのものでしたのに」平素、無口な祓川が、ここぞとばかりによくしゃべる。

「・・・」浅子の顔から見る見る血の気が引いて行った。明らかに動揺している。

「さて、誰が弟さんを殺したのでしょうか?」

「し、知りません。ただ・・・」言いたいことがあるようだが、躊躇している。

「ただ、何でしょう?」

 浅子は意を決した表情で、「則天さんは浮気をしていました。それも、相手は石川健文さんです」と早口で言った。

「なるほど~なるほど~聡美さん、いえ、則天さんと石川は不倫関係にあったのですか⁉」

「はい」と浅子は短く頷いた。

「それは・・・二人が不倫関係にあったことを示す証拠のようなものがあるのでしょうか?」

「いいえ、そんなものはございません。聡美さんの表情や話し方、それに二人の様子を見ていれば分かります」

 女の感というやつだ。これがなかなか侮れないのであるのだが、刑事の感同様、証拠能力はない。浅子もそのことが分かっているようで、「守弘は二人のことで、悩んでおりました」と付け加えた。

 被害者の証言があったとなると、信憑性が高まる。

「なるほど~なるほど~南洲守弘さんは奥さんの不倫に気がついていて、悩んでいた。そして、相手が石川健文であることを知っていたと言うのですね?」

「いえ、ただ、あの子は聡美さんが不倫をしているんじゃないかと疑っていただけです。そして、そのことで悩んでいたのだと思います。最近、暗い顔でぼんやりしていることが多かったものですから。わたくし、聡美さんの相手は健文さんだったと思っています。親族で集まる時、二人はわざと余所余所しく振る舞っていましたが、視線が、その、相手の姿を常に追っているのです。聡美さんが健文さんを見つめていることが多かったですね」

 要は南洲守弘が何事か悩んでいたというだけだ。会社の経営は楽ではなかった。悩んでいたのが不倫だったとは言い切れない。

 残念ながら証拠にはなりそうもなかった。だが、二人が横浜のレストランで会っていたという証言があった。浅子の話を単なる妄想だと、切り捨てることはできなかった。

「なるほど~なるほど~二人が不倫をしていたのなら、何故、則天さんは事故死したのでしょうか? 二人にとって、邪魔者は守弘さんだったはずです」

「それは・・・あの日、聡美さんは守弘を亡き者にしようとして、誤って転落したのだと思います。あの子を二階のベランダから谷底に突き落として、殺してしまうつもりだった。ところが、守弘に交わされてしまい、反対に聡美さんが転落してしまった。きっとそうです」

「なるほど~なるほど~」

 浅子の話は想像に過ぎないが、的を射ているように聞こえた。

「聡美さんが殺されてしまったものだから、健文さんは一族のものを焚きつけて、守弘を殺したのです! あの子、南洲を名乗っていましたが、私もあの子も、南洲家とは血の繋がりはありません。聡美さんの遺産はあの子が継いで、あの子が亡くなったら、私が継ぐべきです。たった一人の親族なのですから。それを、あの一族は人を金の亡者だと決めつけ、あの子の遺産を取り上げようとしている。クズ山だから、あの山だけは欲しい? 冗談じゃないわ。今の話だと、クズ山どころか宝の山じゃない! 全く、あの一族の人間は――」浅子はギリギリと歯ぎしりをした。

 溜まっていた鬱憤が爆発してしまった。どうやら、浅子は石川山を石川に渡すことに同意していないようだ。

「まあ、奥さん、少し、落ち着いてください」などと祓川は言わない。「なるほど~なるほど~」と感情の赴くままにしゃべらせた。

 浅子は、「あの夜、事件があった夜、夫は南洲家から青い顔で戻って来ると、私に『すまない、すまない』と繰り返したのです。『何があったの? 何がすまないの?』って聞いても、答えてくれませんでした。後で、その夜、守弘が殺されたことを知って、あの晩、南洲家で何かあったのだと思いました。あのろくでなしの一族が、よってたかって守弘を殺害したのです。そうに違いありません!」と一気に吐き出してから、はたと口を噤んだ。

 うっかり、夫の犯罪を告白したことに気づいたようだ。

「どうしました?」と祓川が水を向けても、「いえ、何も・・・忘れて下さい。全ては私の想像ですから・・・」と前言を撤回した。

 二人の子供たちから、父親を奪う訳には行かないのだ。

「弟さんを殺害した犯人を捕まえたいのです。何でも結構です。石川健文が犯人だと示す証拠はありませんか?」祓川は暗に「犯人は石川なので、安心してしゃべって構わない」ということを伝えようとしていた。

 夫の身を案じているのだろう。浅子は口を閉ざしたままだった。祓川は「奥さん、警察はバカじゃない。隠していたって、いずれ分かります。警察に知れてからじゃあ、何を言っても遅い。見た感じ、あなたがた夫婦は石川に利用されているだけのようです。ここは我々の捜査に協力した方が、あなたがたの為です」と畳みかけた。

「実は――」と浅子が落ちた。「ある日、不動産会社から夫宛てに郵便物が届いたのです。私、気がつかずに、それをうっかり開封してしまいました。そしたら、中にアパートの賃貸契約書が入っていました。夫は私に黙って、八王子にアパートを借りていたのです。私、てっきり浮気をしているのだと思って、夫を問い詰めました。そしたら、『健文さんに頼まれて、アパートを借りたんだ。賃貸契約の契約者になっただけだ』と言うのです。そんなこと・・・私、信じられなくて、アパートに行ってみました。そしてら、アパートには若い男の人が一人、住んでいるだけでした。

 私、心配なのです。夫が変なことに巻き込まれていないか。南洲一族の掟だとかで、仕方なく協力しているだけなのです。全く、今時、あんな古臭い掟を信じるなんて・・・刑事さん、お願いです。夫は悪いことなんか出来る人じゃありません。きっと健文さんに唆されて、協力させられているだけです。助けてください」

 浅子は両手で顔を覆って、泣き出した。

「奥さん、それで結構です。旦那さんは石川の悪事に無理矢理、加担させられているのでしょう。それで、そのアパートの住所を教えてもらえませんか?」

 祓川は浅子から八王子のアパートの住所を聞き出した。

 篠村家を辞すと、祓川は「捕り物には興味がない」と言い、宮川に「武蔵野署と連携して、大至急、八王子のアパートにいる人物を押さえろ!きっと事件の鍵を握る人物のはずだ」と怖い顔で命じた。

「いいんですか――⁉ 祓川さん。手柄を譲ることになりますよ」と宮川が言うと、「くだらん! 手柄もへったくれもあるか! 事件を解決することが先決だ」と一喝されてしまった。

 宮川は鈴木と連絡を取り、「篠村幸太郎は石川の指示により八王子にアパートを借りて、誰かを匿っているようだ。事件に関係のある重要人物だと祓川が言っている」という情報を伝えた。

「分かった。俺たちに任しておいてくれ!」と鈴木たち武蔵野署刑事課の捜査員は勇躍、八王子に向かった。そして、アパートを急襲した。

 八王子郊外にある鉄骨造のプレハブ工法で建てられた二階建てのアパートの二階の一室が目指す部屋だった。問題のアパートには男が一人、住んでいた。

 アパートを訪ねると、男はドアを薄く開けて顔を覗かせたが、来訪者が刑事だと知ると、いきなりドアを閉めた。そして、ドアとは反対側の窓から逃走を図った。当然、逃走に備えて、裏にも刑事を配置してあった。

 男は二階の窓から飛び降りた。足をくじいたようで、地面で動けなくなっていた男を難なく取り押さえることが出来た。

 男は斎藤淳史だった。

 コジョーの前身、アツモリを守弘と一緒に立ち上げ、共同経営者となっていた男だ。その後、守弘と仲たがいし、袂を分かった。そして、新たに立ち上げた会社の経営に失敗、借金を抱えた。借金返済の為に、親類縁者から金を借りたが、その金を持ち逃げし、詐欺罪で訴えられている。

 逃亡中の身の上だった。

「はは。こういう力仕事は、祓川さん向きの仕事じゃないかもしれないな」鈴木はご機嫌な様子で、斎藤確保の一部始終を宮川に教えてくれた。

 僕もその場にいたかったというのが宮川の素直な気持ちだったろう。

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