第6話:仲間のために
「そして、この戦いでも、私はその誇りを捨てるわけにはいかない!」
私の言葉が、二人の耳に届いたのか、セリナとエリアスは一瞬、目を見開いた。
その表情がわずかに変わる。私の言葉が、彼女らに力を与えたように感じる。
「メイリス団長……」
「私たちも一緒に戦います。引き下がることはできません!」
二人はすぐに立ち上がり、私の側に再び並んだ。私たちは、たとえどれほど厳しい状況でも、諦めることなく戦い続けると誓った。
ハウザーの魔力が、その圧倒的な力が大地を震わせる。しかし、私たちの心は揺るがなかった。目の前に立ちはだかる強敵に対して、恐れることなく立ち向かう覚悟ができていた。
「来い、ハウザー! 私たちが貴様を打ち倒す!」
私が叫ぶと、エリアスとセリナも同時に声を上げ、各々の武器を構えた。魔力が全身に集まり、私たちの力が一つとなる。
ハウザーは嘲笑うように口を開く。
「下らない騎士道だ。ならばお前の騎士道とやらで、守ってみるといい!」
私が魔力を研ぎ澄ませ、高まらせていく。エリアスとセリナも同様に、集中して魔力をア高まらせていた。
「圧倒的な力の前に跪くといい――剣王豪雷!」
言葉と共に振り下ろされた一撃は、天を裂きながら迫り来る。
「――焔光一閃!」
私の火焔を纏った一撃が、迫る攻撃に向けて放たれる。
「――聖光の裁断!」
掲げられた剣に神聖な光が収束し、振り下ろされた。
「――聖焔双撃!」
聖なる炎を纏った双剣が、振るわれた。
私たちの全力による一撃が、ハウザーの攻撃と衝突して空間が悲鳴を上げる。
「俺の一撃と拮抗するとは、その二人、ただの騎士ではなさそうだな。だが!」
ハウザーの魔力が高まり、拮抗していた状況が崩れ去った。
私たちの攻撃は飲み込まれ、死が目の前に迫っていた。
「勇者の全力が……」
「うそ、でしょ……」
これが運命だというのなら、私は受け入れよう。だが、エリアスとセリナは現実を受け入れられないといった表情を浮かべていた。
瞬間、迫っていたハウザーの一撃が弾かれたように消え去った。
「間に合ったみたいですね」
そこに現れたのは、どこにでもいる兵士の格好をした少年――リクだった。
◇ ◇ ◇
「よし、行くぞ!」
俺の言葉が戦場の空気に響き渡る。エリアスとセリナが先に行った後、俺たちはすぐに動き出した。
数人の兵士たちが我々の前に立ち塞がるが、それに構う暇はない。俺たちには目的がある。
「敵本陣の制圧!」とだけ呟き、俺は前方に向けて駆け出した。
後ろからは仲間たちの足音も続いている。すでに状況は分かっている――ここでの勝利が、全ての流れを決める。
最初の障害物が現れた。俺たちの進行を阻むように構えた敵兵が、武器を高く掲げて突っ込んでくる。だが、俺の中に潜む冷徹な意識が告げる。
「邪魔だ」
素早く足元を踏みしめ、敵の一人に突進。刃を引き寄せて振るうと、相手の盾を弾き飛ばし、そのまま身体を貫いた。短くも力強い一撃が、敵兵を無力化する。
後ろから続いていた仲間たちも同様に、巧妙に立ち回りながら敵兵を倒していく。無駄な動きは一切なく、目の前に立ちはだかる者を次々と撃破していった。
「敵本陣までもう少しだ」
俺は息を吐き、再び前を見据える。
道中、敵の司令塔に至るまでに何度も激しい戦闘が待っていた。しかし、敵の戦力は次第に疲弊し、彼らの陣形は崩れていく。頭を失うことの恐怖は、戦意をどんどん削り取るのだ。
「ここからが本番だ」俺は心の中で自分に言い聞かせ、さらに速度を上げた。
そして、ついに敵の本陣に到着。広い広場を前に、我々は一瞬立ち止まる。全てはここで決まる。
目の前には、大きな天幕があり、他にも大小さまざまな天幕が設置されていた。
食料もあるのでここは焼き払った方がいいだろう。
その前に、茂み越しで時を待つ。
少しすると、高官らしい人物が出てきた。
「アレが今回の総司令か?」
味方に尋ねると、首を横に振るわれた。
「いや、情報によると別だな。恐らく参謀だ」
「なら総司令はいったいどこに行ったんだ?」
味方にざわつきが生じる。俺はこういったことも想定済みだ。
そこで疑問が残り、一つの可能性が浮上した。
「……もしかして団長が対峙した敵将、アレが総司令か?」
「まさか……いや、あの大剣はもしかして……」
一人は心当たりがあるのか、考え込んでいた。そしてすぐにその答えを出した。
「多分だが、ヤツは【豪剣】ハウザー。今回の総司令の可能性が高いな」
「マジかよ……」
状況はすぐに切り替えなければならない。
もしあいつが本当に総司令なら、団長たちが危険だ。
ハウザーの実力は、大陸でも五本の指に入る強者として知られている。
「リク、どうする?」
「仕方ない。ここを早く片付けて、俺は団長たちの元へ向かう。お前たちは敵本隊の司令塔を潰してくれ」
「了解!」
仲間たちは一斉に頷き、素早く任務に取り掛かる。
俺はその場でひと息つき、腹を決める。
もしハウザーと対峙することになったら、簡単には終わらないだろう。でも、それを避けるわけにはいかない。
団長たちが危ない。俺のすべきことはひとつだ。
「速攻で潰すぞ――作戦開始!」
三十分もかからないで敵司令部は制圧され、俺は仲間に急いで告げて、団長たちの元へ向かう。
状況は切迫している。ハウザーの膨大な魔力が込められた一撃が、団長たちに迫っているのが目の前の景色から感じ取れた。団長たちも負けじと対抗しているが、時間の問題だ。
「くっそ、間に合え!」
俺は魔力を全身に巡らせて、全速力で駆ける。
ハウザーの魔力が高まったその瞬間、団長たちの攻撃が飲み込まれ、攻撃が迫っていた。
団長たちにそれを避ける時間はない。
俺は躊躇せず攻撃の前に出た。魔力を拳に集め、渾身の力でハウザーの攻撃を受け止める。
俺の拳とハウザーの一撃が激しくぶつかり合う。衝撃が周囲に広がり、空気が震える。
さらに力を込めると、ハウザーの放った一撃は消滅した。
「間に合ったか」
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