第21話:いい加減視線が痛い
「あ、三人に一応紹介しておきますね?この人はクラスメイトの
妖精がお姫様を連れてくるという謎の状況の中、その張本人の
冷静に考えればわかる。なぜかこのクラスに他のクラスの美少女二人が揃っているんだ。俺だって、当事者じゃなければ落ち着くなんて無理だと思うだろう。なお、実際は俺は当事者なうえに二人のことを隠している部分まで知っている状況である。しかも、それぞれにかなり深く関わってしまっている。正直、俺たちの今の関係バレたらマジで刺される可能性を否定できなくなるから勘弁して欲しい。
「ほら、花恋ちゃん」
「え、ええと。始めまして?篠原花恋です。よろしくお願いします?」
香里菜が促すままに自己紹介をした花恋だったが戸惑いを隠し切れていない。当然の帰結だと思う。廊下を歩いていたらクラスメイトによその教室に連れ込まれて自己紹介を促されたんだからな。俺だって戸惑う。
「わあ、お姫様だー!私は
「俺は
「最愛だなんてー。えへへー。ボクもだよー」
そんな混乱の最中にありそうな花恋に対して、麻耶が真っ先に自己紹介をした。それに乗っかるように守も続いた。後半のいるか?隙あらば二人の空間にトリップして返ってこなくなるのマジでやめてくれないか?
「ええと、貴方は?」
「俺か?俺は
流れ的に俺も自己紹介をしておいた。まあ、初めて話した体なのだからこちらの方が自然だろう。
「白いの呼ばわり、ですか…」
なんか俺の物言いに不満げな様子を隠しもしない人がいるが、無視しておく。あんたのせいでめんどくさい状況になりつつあるんだからこれくらいは普段の意趣返しとして受け取ってほしい。というか受け取れ。
「白いのって…」
「進ー、それはないわー」
「進君、さすがにそれはどうかと思うなー」
花恋、守、麻耶、それぞれから苦言が飛んできた。花恋のものは内情を知っているからか苦笑交じりのものだったけれど、バカップルのはガチトーンだった。正直、許してほしい。
「いくら幼馴染とはいえその呼ばれ方は不服なんですが」
「なんでそんな呼ばれ方をしたのかは自分の胸に聞いてみろ」
「心臓の鼓動しか聞こえないと思いますよ?」
「いや、そういう訳じゃなくてだな」
「まあ、そんなどうでもいい話置いておきましょうよ」
「おい、逃げるな」
そのまま反省させるのを試みてもいいと思ったが、のらりくらりと躱されるのが目に見えているし、他に優先して聞きたいこともあるから仕方がなく放置しておくことにした。
「で、なんで篠原さんをここに呼んだんだ?」
「ただいい子だから紹介しようと思っただけですよ」
「本当にそれだけなのか?」
多分、この言葉嘘ではない。だが、これだけが理由ではないし、なんならもっと別のものが本来の目的な気がする。ただ、この場で追及するとあとがさらに面倒になることが確定するから言及はしない。
「まあ、紹介についてはこれで終わりでいいと思うので、もう少し弁当の時間を楽しみましょうか。あ、篠原さんも一緒にどうですか?」
「…ちょっと待っていてください」
香里菜の提案を聞いた花恋は俺の方へと視線を向けるとその茶色の目でどうすればいいのか訴えてきた。その訴えに無言の頷きで答えると花恋は返事をして教室をあとにした。このやり取り、守たちにバレてない、よな?
「ねえ、進君」
「何だ?」
「篠原さんと前から知り合いだったりするー?」
「いや、まともに話したのは初めてだな」
「そっかー」
どこか勘の鋭いところのある麻耶に気づかれたかと思ったが、そうでもなかったらしい。いや、実際は疑惑は持たれたんだろうが。まあ、麻耶は勘は鋭くてもそのことをあっさり流すタイプの人間だから気にしなくてもいいだろう。多分頭の中テニスと守のことがほとんどだと思う。
「すみません、お待たせしました」
しばらく待っていると、花恋が弁当を手に戻ってきた。
「それでは食べましょうか」
さて、香里菜は一体何を仕掛けてくるのか。大したことはしてこないと思うが、さてどうなるか。
―――――――――
クラスについてですが、進と守、花恋と香里菜がそれぞれ同じクラスで教室が隣同士です。麻耶のクラスはまた別のクラスですね。
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