第14話:お姫様と妖精が家に来た

「で、結局二人ともうちに来る流れになるんだな」


 どうしてこうなったんだ、とため息交じりについそう言葉が漏れる。香里菜の爆弾発言を食らったあと、俺たちは一度別れて教室に戻り、東門で集合していた。


「私の場合、予定ないって行った結果引っ張られただけな気もするんですけど…」

「まあ予定ないなら問題ないじゃんかー」

「あの、香里菜さん、押さないでください」


 その呟きに反応してだろうか、後ろからそんなやり取りが聞こえてくる。今は、俺が家まで先導して歩いているところだ。丁度帰宅部と部活組が帰る時間の中間くらいの時間だったために、通学路に人通りは少ない。正直助かった。


 だって、冷静に考えてみると後ろにいる二人はどっちもタイプの違う美少女だ。それこそ学校でトップクラスと言ってもいいと思う。片やお姫様、片や妖精。それぞれそんな呼ばれ方をしているレベルなのだ。そんな二人を後ろに引き連れて歩いていると思うと、あとが怖いな。


 そんな二人の気配を後ろに感じながら家路につくこと十分くらい。俺たちは今暮らしているマンションの前に着いた。


「しかし、まさかすー君が実家じゃなくてこっちで一人暮らししているとは思わなかったよ」

「親がどっちも近い方がいいだろって言ってくれたからな。それに実家にいたとしても親はどっちも忙しくてあまりいないからぼ一人暮らし状態なのは変わらないしな」

「あー、そういやそうなんだっけ」


 俺の部屋のある階までのエレベーターでの移動中、香里菜になんで一人暮らしをしているのかを聞かれたので軽く答えておいた。すると、俺の両親がどちらも忙しくてあまり返ってこないことを知っている香里菜は納得してくれた。…一人暮らしをしている理由は本当はそれだけではないんだけどな。


「さて、と少しだけ待っていてくれ」


 俺の今住んでいる部屋の前に着いた。俺だけ先に中に入った。一応昨日守が来ている関係で片付いているとはいえ確認はしておきたい。


 確認した感じ、特に片付けるべきものはなさそうだった。そのため、登校用のリュックを自室に置いて、それから何か飲み物を入れるためのお湯を電気ポットでセットだけして再び玄関へと戻る。


「二人とも入ってもいいぞ」

「おじゃましまーす!」

「おじゃまします」


 そう言いながら入ってくる二人。香里菜は靴を脱ぎ捨てるように入ったのに対し、篠原さんは綺麗に靴を揃えている。あ、香里菜の脱ぎ捨てた靴もしっかり綺麗に置き直している。そんな一連の流れを見て、俺は思わず香里菜へとジト目を向けてしまう。


「なあ、香里菜」

「なーに?」

「人の家に来るときくらいは靴を綺麗に脱ごうとかそういうことは考えないのか?」

「あ、ごめん。普段は気をつけてるんだけど」

「俺ならいいいいと思ってるのかよ。まあ、篠原さんが直してくれたけどな」

「そうなんだ。ありがとね、花恋ちゃん」

「どういたしまして、でいいんですよね?当然のことをしただけなんですけど」

「ごめんねー?すー君の前だと気が緩んじゃって」


 若干苦笑しながら篠原さんは返した。今までの行動から素直にお礼を言われると思っていなかったのだろうか?まあ、香里菜の今までの行動から考えるとわからないこともない。だが、香里菜は真面目なときはふざけないということは知っている俺としては違和感はない。


「おー、ここが今のすー君の巣なんだねー」

「巣ってどんな言い方だよ。鳥じゃあるまいし。まあいいや。二人ともソファに腰掛けて少し待っていてくれ」

「はーい」

「わかりました」


 二人をリビングへと招き入れてソファに座らせて、俺はキッチンでさっき用意しておいたお湯が湧くのを待っていた。


「ねえねえ、すー君」

「ん、どうした?香里菜」


 ソファから目を離したのが悪かったのだろうか。いつの間にか香里菜が俺の後ろに回り込んでいた。振り向いてみると、そこには不敵な笑みを浮かべる香里菜の姿があった。


「ふっふっふー」

「なんだ?」

「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ?」


―――――――――


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