第13話:なんでそうなった?

「まあ、そんな手紙の誕生秘話の方は置いておいて、花恋ちゃんの方だよ」


 そう言った香里菜は篠原さんの方へと詰め寄っていった。篠原さんは女子の中でも小柄だが、香里菜はそんな彼女よりもさらに小柄だ。多分十センチくらい違うと思う。つまり、香里菜が篠原さんのことを至近距離で見上げることになるのだが、二人の確かな膨らみ同士がぶつかり合って互いに強調しあう状態になっている。…香里菜のは見てわかるレベルで大きいけど、篠原さんのも若干わかりにくいけどかなり大きいんだな。って、違う、そうじゃない。今は香里菜の話の方だ。


「だってさ、教室ではいつもお清楚ー、って感じ醸し出してるじゃん。でも、すー君の前だとまるで別人じゃん?」

「確かにそれはそうですが」

「でしょ?で、なんで花恋ちゃんはすー君の前ではそれを出すのかなって」

「それ、私自身でもわからないんですよ」


 篠原さん自身がわかっていない、ってどういうことだ?


「なんでしょうね。瀬川君の前だとあっちの方が自然な感じがするんですよ。落ち着くというか」

「あー、そういう感じなのか。んー、なるほどなるほど」

「ええと、里乃さん?」

「香里菜でいいよ。まあ、つまりすー君には花恋ちゃんにとって何か安心できる要素か何かがあるってことか。ふむふむ」

「何がふむふむなんですか!?」

「そして、あたしがいるとたとえすー君の前だとしてもそっちが出てくるんだね」

「いや、私の話を無視して進めないでくださいよ!」


 俺が疑問を抱いている横で篠原さんと香里菜の問答は姦しく続いていた。まあ、香里菜が自分の考察を篠原さんに投げつけてそれに対して篠原さんが反応を返しているだけなのだが。あーあ、完全に篠原さんが香里菜のペースに持っていかれているのがわかる。如何せん、こうなってしまった香里菜は止まらない。篠原さんが若干気の毒に見えてくるレベルである。…いい加減止めるか。


「とりあえず香里菜が篠原さんに興味津々なことはわかった。わかったんだが、最終的には香里菜は一体どうしたいんだ?」


 すると、香里菜の話がピタッと止まった。篠原さんは、若干ホッとしているように見える。まあそりゃこの勢いの相手をしてると疲れるだろうからな。もう少し早く介入すべきだったか?


「え?目的って言われてもそんな陰謀めいたものは一切考えてないけど?ただ面白そうだからやっただけ」

「え?本当にそれだけなのか?」

「そうだよ?すー君と花恋ちゃんが二人でこっそり会っていることとか、そのときの花恋ちゃんの様子がどこかおかしいってことは誰にも話す気はないよ」

「…マジで面白そう以外の動機ないのかよ」

「まあ、嘘をついてるかどうかの判断はそっちに任せるよ」

「いや、こういうときの香里菜は嘘つかないってわかってるからいいよ」

「花恋ちゃんはどう?」

「私の様子はおかしい、おかしいんですか…。あ、香里菜ちゃんの幼馴染の瀬川君がそう言うのならそれを信じます。というか信じるしかないです…」


 香里菜におかしいと言われてショックを受けていたらしい篠原さん。でも、まあ、篠原さんはそうするしかないわな。篠原さん視点だと知られた時点で広められると結構面倒なことになるのが確定していたからな。俺目線でもそれはあまり変わらない、というか俺の方がむしろ面倒になるはずなんだが、俺は香里菜が面白そうなことを見つけるとそれを秘密にしてニヤニヤするのを知っているからな。だからそこらへんには変な信用がある。


「まあ、というわけで。この話はこれでおしまいでいい?」

「俺はそれでいいよ。正直久々に相手したせいで疲れた」

「私ももう終わりでいいですよ。というか終わらせてください。疲れました…」

「ん、じゃあこれでこの話はおしまーい!」


 というわけで嵐のように現れた白髪少女との邂逅は終わりを告げたと思ったんだが、


「じゃあ話は変わるんだけどさ」

「ん、なんだ?香里菜?」

「すー君って今一人暮らししてるんでしょ?」

「ああそうだが。何で知っているんだ?」

「お母さんに聞いたんだ」

「ああ、そういや母さんは連絡を取っているんだったか」

「うん、だからね。今からすー君の家に行ってもいい?あ、花恋ちゃんの都合がよければ花恋ちゃんも一緒にね」

「「はい?」」


 香里菜の落とした爆弾は今日の出来事はまだ終わらないことを示していた。


―――――――――


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