第7話:ハロウィンに向けて
そのたびに彼女は何かしらのお菓子を報酬とばかりに持ってきていた。まあ、毎回結局そのお菓子は篠原さんの方が多く食べていたし、半分くらいはゴミをその場に置き去りにして帰っていたんだけどな。わかってはいたことだが、篠原さんは素の状態だとどこか抜けているらしい。察していたことではあるんだけども、正直想像以上だった。
逆に、学校での様子だとあんなお姫様と言われるような完璧な振舞いをできるのか疑問に思ってしまう。あまりにも違いすぎて、一週間くらいは違和感に戸惑わざるを得ないレベルだった。まあ、今ではすっかりと慣れてしまったことではある。人間の適応力は恐ろしい。
篠原さんの話してくれている内容は、基本的にはやはり告白を受けたことに対する愚痴が多かった。とはいえ、毎日会っているとなると、さすがにそこらへんのネタはなくなるらしくて、それ以外の話もした。
で、そのネタは篠原さんの趣味の話だった。出会ったときの選曲のイメージが強かったために、いわゆるオタク趣味が飛び出てくるのかと思っていたが、正確に言うと曲を聞くこと自体が趣味らしい。J-POPとか、K-POP、アニソン、ボカロ、なんなら演歌までなんでも聞くらしく、それらについての話を結構された。演歌とか親も聞いてなかったから相槌を打つことしかできなかった。とはいえ、本人は聞いてもらえるだけでも嬉しいらしく、その表情は柔らかいものになっていた。
ただ、話についていくためにそれらの曲について調べたところ、どうしても引っかかることがあった。演歌に関してはともかく、それ以外の曲がなんというか、少し古かったことだ。具体的には二から三年前のものが多かった。最新の、それこそ流行りの曲なんかはあまりなくてそこに少し違和感というか、イマドキの女子高生らしくないなと思ってしまった。いや、本人に興味がないだけなのかもしれないが。
そういえば、初めて俺が篠原さんの素を見たとき、そのときに歌っていた曲も少し昔に流行った曲だった。そうなると、やはり彼女の趣味は正確に言うと様々な曲を聞くことなのかもしれない。
と、まあそんな感じで篠原さんと話すようになったわけだが、その時間以外は特に学校生活に変化があるということはなかった。クラスが違うということもあって、篠原さんとも基本的に言葉を交わすこともなかったし、見ていた感じ、まあ、見事な優等生でお姫様という感じだった。
「おい、
と、ついそんな少し考え事をしていたところで一緒に弁当を食べていた
「あー、すまん。少し考え事してた」
「話してるときにそんなことすんなよ、全く」
そう言いながら守は俺に対して軽くデコピンしてきた。まあ、今回は話を聞いていなかった俺が悪いから甘んじて受け入れる。大して痛くなかったからな。
「明日の予定の確認だろ、覚えているから心配しなくていいぞ」
「ふう、ならよかったわ。明後日のハロウィンの用意も含めてのだからな。俺にとっては大事なんだよ」
「まあ、守はそうだろな」
そう、今俺たちは明後日のハロウィンに向けてお菓子を作ろうという話をしていたのだ。理由としてはどうやら守が彼女にタイミングでお菓子を渡せるように用意をしておきたいらしく、それでそのお菓子の作り方を教えて欲しいらしい。
「で、何作りたいんだ?」
「んー、クッキーとかがいいかな」
「クッキーか、それならオーブンとかうちにあるから問題ないし、致命的なミスもしにくいだろうし最低限日持ちはするからまあ適当だろうな」
「ん、ならそれでいこうぜ。んじゃ、あとで材料とか送っておいてくれ。今日のうちに買っておくわ」
「わかった」
俺は守に頼まれて時々料理を教えている。今食べている弁当を自分で作っていたのことを守に話したことがきっかけなのだが、その話を持ちかけられたのが五月くらいなのだが、意外にも長く続いていた。まあ、それにも理由があるんだが。
「やっほー!守ー!」
と、考えていたらその理由本人が現れた。そして、彼女は守の後ろにパッと動いたかと思ったらポニーテールをたなびかせながら迷うことなく守へ後ろから思いっきり抱き着いたのだった。…正直、見慣れた光景である。
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