第2話 助けての言葉が出せない。下編


唯一、味方になったのが

祖父だった。


でも、助けてが言えなかったんだ。





実は父親から

性的虐待を受けていたなんて

言えなかった。


最初は胸から始まり

性行為にまで及んだ。


小学校5年だった。



初めての月経。

それが分かってから、身体を弄ばれる。


苦痛でしかなかった。

なんでこんな目に遭わなきゃいけないのか

もう、逃げたかった。


逃げ道が、ない。



咄嗟に私は祖父に

「パパに…」と相談した。

初めての勇気を出した言葉だった。

「助けて」と。




祖父は頭に血が登り

離婚届を持ってきた。


「大事な孫に何している!

男に二言は無いだろ!書け!」



睨みつけられながら

父親は震える手を抑えながら

離婚届を書いた。


母親は泣いていた。


娘にこんなことをした、ではなく

「なんで私を見ないの?」と

嘆いていた。




私って一体

なんなんだろう。


私の存在価値って

なんなんだろう。


父親に弄ばれて

母親に睨まれて


守ってくれたのは祖父だけで

祖母は何もしてくれない状態。




悲しみも無かった。

ただ、無だった。

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