第3話:家では案外優しい未久。
学校では暴力的は未久。
なのに家に帰ると人格が変わったみたいに僕には優しい。
鎧を脱いだ女神様みたい。
僕と父親が家事ができないもんだから、未来が全部やってくれてるし料理や
部屋の掃除や洗濯はお手の物。
近所のスーパーにもひとりで行って節約のため値段が安い食材もちゃんと選んで
買って来るし、その点でも文句無し。
だから僕も父親も未久には大いに助けられてる。
だけど、そうなんだけど、ちゃんとしないとクチうるさい。
朝、僕はいつもきっちり寝ぼけている。
最初の頃は未久は僕に部屋のドアが引き戸なのか押し引きするドアなのか
分からなくてドアを蹴破ろうとした。
今はドアを蹴り倒すこともなくバーンって勢いよく開けて入ってくる。
どっちにしても壊す気か?
「君、誰?え?・・・どこから僕の部屋に入ってきたの?」
「私だけど・・・未知男ちゃん・・・
「まじで?・・・誰?」
「ひどい・・・私を忘れてんの?・・・未久だよ、しばくど!!」
「未久?・・・僕って一人っ子なんだけど・・・」
「まだ寝ぼけてんのか?」
「分かった、目を覚まさせてやる」
そう言うと未久は寝てる僕に向かって思いっきりダイブした。
いきなり腹の上に未久が飛んできた。
「げえ〜〜〜〜げふっ・・・げ・・・うううううう」
「い・・・いきなりダイブなんかしてきやがって・・・げふげふ」
「わっ、未久じゃないか・・・何やってるんだよ」
未久は自分の顔を僕の顔のぴったりくっつけながら言った。
「私って分かった?未知男ちゃん・・・彼女のこと忘れたら殺すからね」
「女の子が殺すなんて言うな!!」
「寝ぼけちゃって冗談も分かんないの?ボケ」
「彼氏に向かってボケって言うな!!」
「分かった、分かった・・・起きるから・・・なんだよ、ダイブばなんか
したらまじ死ぬだろ」
「朝からそういうこと平気でするなよな?」
「起こしても起きないからだよ、しかも私の存在忘れてるし・・・」
「忘れてなんかないよ・・・忘れるわけないだろ」
「朝からあんなヤバい起こし方されたら忘れれてても思い出すよ」
「ごちゃごちゃ文句言ってないで早く朝ごはん食べて支度しないと学校遅れ
ちゃうよ」
「分かってるよ・・・言われなくったって、小姑か・・・」
「はいはい、起きて・・・またダイブしようか?」
「よめろ〜!!」
こんな日常茶飯事なやりとりしててもお互いどこか優しかったりする。
だからやっていけてるんだろうな。
「あのさ、朝はダイブとかじゃなくてチューで起こしてくれないかな?」
「そしたらめちゃ目覚めもいいし、気持ちいいんだけど・・・」
「分かった・・・じゃ〜明日からそうする」
「未知男ちゃんとよりよい生活を営んでいただくために・・・」
そう言って未久は表情ひとつ変えずに僕の部屋から出て行った。
僕はしぶしぶ二階の自分の部屋から、リビングに降りて行った。
未久は台所で朝食の支度をしていて父親はキッチンテーブルの椅子に腰掛けて
テレビを見ていた。
テレビでは某国がまたミサイルを発射したとキャスターがくっちゃべっていた。
ミサイルは日本の排他的水域に落ちたらしい。
「怖いよな・・・あんなに次から次へとミサイル打ち上げてたら、いつか
日本に落ちてくるんじゃないか?」
僕がそう言うと
「心配だね・・・でもあれって無駄な消費だね・・・」
って未久は他人事みたいに言った。
サイボーグには世界情勢とか大極的なことに関心なんかないのかな?
朝ごはんを食べると父親は自分の部屋に引っ込んで行った。
僕は未久とラブラブで朝食の後かたずけをした。
「未知男ちゃん・・・私がサイボーグだってこと抵抗ない?」
「今更なに言ってんの?・・・抵抗なんかあるわけないじゃん」
「私、未知男ちゃんを信じてるけど時々それが気になる時があるの?」
「関係ないよ・・・未久は人間の女の子とどこも違わない」
「そうかな?」
なんで学校にいる時の未来と家にいる時の未来はこんなに違うんだろ?
外にはなにかと悪人や敵がいるから?それで未久はナーバスになるのかも
しれない。
最近は無造作に人を刺したり傷つけたりする人がいるからな。
変質者にストーカー・・・殺伐としてる・・・乱れた世の中だよな。
贅沢言わないから未久が怒をのけて喜と哀楽って感情がもっと豊かに持って
たら楽しいだろうなって思うんだけど・・・。
今更、夢見る乙女って訳にはいかないかな?
つづく。
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