夜。

抹茶latte

本文

明日が来てほしくないな、と思う夜がある。


そういう日は大抵、夜更かしをする。


今日も、そういう日だ。


冬の寒さが一層強くなった今日。


PCを立ち上げ、特にやりたいこともなく、ゲームをする。


カチコチと鳴り響く時計の音と、カタカタと指の動きとともになるキーボードの音。


はぁ、と一つ、ため息がこぼれる。


何やってるんだろう、という思いが脳を支配する。


こんなことをしても、明日は来るのに。


目をつぶって椅子の背もたれに頭を預ける。ふと、目を開けてみた。


 

――月が光っている。


 

当たり前のことだ。今は夜で、窓の外には月があるのだから。でも、曇ったこの窓では、きれいには見えなかった。


でも、いつもの見えにくい空なら


――ベランダに出てみてみるか。


 

~ほんの少しだけでも、いつもと違う、"特別"な日常を~

 

【Bad End】


 窓の前に来たはいいものの、ベランダのコンクリートの床が冷たく光って、寒そうだ。


 それでも、いつもと変わったことをしてみようと決心し、外へと踏み出す。


 ――つめたい。


 冷たい空気が、体全体を包み込む。


 当たり前だ。もう冬なのだから。


 空を見上げても、星はあまり見えなかった。それに、あんなに光って見えた月は、満月には満たない。それでいて、半月とも言えない。中途半端な月、一緒だな。

 

 

 ...来るんじゃなかったな。



 変わったことなんてしなければ良かった。

 

 今日も、命を無駄に削って、無駄な抵抗をする。


 何やってんだろ。

 


 【Happy End】


 窓の前に来てみたら、外には雲ひとつない澄んだ空が広がっていた。


 綺麗な景色に、期待をふくらませながら窓を開け、外へと踏み出す。


 つめたい。


 外に出た瞬間、冷たい空気が全身を覆い、だんだんと体に侵食してくる。


 ――でも、


 大きく息を吸い込んだら、肺にひんやりとした新鮮な空気が入り込んできて、心地よい。


 顔を見上げてみたら、夜空はうまく見えなかった。


 部屋の明かりをつけているからだろうか、と思い、部屋の明かりを消してきてから再度空を見上げる。


 さっきの何倍も明るい月と、優しく輝く星々の光が、とても綺麗だった。


 今までは気にも止めなかった...満月と半月のちょうど中間あたりの月。どんな月の名前なのか。


 調べてみたら、「居待月いまちづき」というらしい。


 中途半端でも、自慢げに浮かぶ夜空の月。


 そして、一番気になったのは、月の周りで輝く星だった。


 月の方が何千万キロも離れているのに、あれだけ月の方が輝いているのに、それでも見える。がんばったら、報われるのかな。

 

 そんなことを考えながら、部屋に戻る。


 今まで幾度なく夜更かしをしてきた部屋。


 

 少しだけ、頑張ってみるか。



 PCの電源を落として、瞼を落とした。

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夜。 抹茶latte @matcha_latte___

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