第3話 扉を開けてはいけない
俺は祖父母の家の廊下を歩いていた。
古くてだだっ
「──あけて」
女性の声が聞こえたのは、そんなときである。俺はきょろきょろと見渡したあと、「気のせいだよな?」と自問して、何事もなかったかのように先に進もうとした。
「──あけて、あけてください」
しかし
この家は広いだけあって部屋数が多いが、ほとんどは使われていない──物置き同然の部屋である。ただその一つに、
声が聞こえてきたのは、まさにその
「──あけて、あけてください」
どう考えても
無視して立ち去ろうとした──が、部屋の中の女性(仮)はそれが見えているかのように、すぐさま引きとめにかかってきた。
「アイドルの○○○さんにソックリって言われるんですよね、わたし」
あの国民的アイドルの○○○だと!?
俺は扉を
「わたし裸なんです。それにウエスト59センチでFカップです。
Fカップで触って良くて乳首がピンク色だと?
それはちょっと……贅沢すぎるのではないか?
高級中華料理と高級フランス料理と高級焼肉とジャパニーズ・スシを全部食べ放題にするくらいの贅沢だぞ?
俺は今度こそ扉を
「あ、殿方の前で裸は良くないですよね。服を着ることにします。あなたの好きそうなものを着ますね」
コスプレで誘惑する作戦に切り替えるか。まあ、なにを着たところで、これまでに形状・感触・色彩の三魔とも言えるおっぱいの誘惑に耐えてきた俺の興味を引くことはできないだろう。
「うんしょ、うんしょ。着替えているので少々お待ちください。ちなみに競泳水着ってやつです。ピッチピチなんですけど、なんかボディラインがくっきりしていやらしいですね」
競泳水着だと……!?
それはあの水の抵抗を減らすことに特化しすぎたせいでスケベ男からの視線に対する抵抗力もゼロにしてしまったあの競泳水着のことか……!?
俺は今度の今度こそ扉を
そう、こう見えて俺はスケベ男ではないのだ。見知らぬ女の水着姿など興味がなく「うんしょ、うんしょ、どうしましょう……胸のところが収まりません」しかし困っているのであれば助けてやらねばなるまい。
俺は扉を
危なかった。
正気に戻った俺は引き戸から手を離す。女の声は続いており──
「ふう、胸はなんとか入りました。でもこの先はどうしましょう。下半身がどうしても……」
危険な誘惑も続いていたが、俺は無視して引き戸の取っ手から手を離し「わたし下半身が蛇なんですよね」なにそれ今なにがどうなってるの!?と脳内で
こうして俺は死んだ。
【死因:巨大な蛇に巻き付かれたことによる全身骨折および内臓破裂。なお彼が死ぬ前に『競泳水着を無理矢理に着ようとしている可愛らしい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます