三流魔術師の課外活動

南瓜の王冠

第1話

(恐らく)クトゥルフ神話の世界に転生した事に気づいてから大体9年鈴木蓮は何時もの様に高校の帰宅路を歩いて帰っていた。


何時もの様に高校に向かい、何時もの様に勉強をし、何時もの様に一人で帰り…何時も違って背後を振り返った。


「ふむ…」


前世で言うなら『アイデア』判定と言うべきか三流とは言え魔術屋オカルティストの直感が何処か疼いていたからだ。


…処で『藁人形と釘』の呪術を識っているだろうか?


藁人形ひとがた名前や髪や血キーワードで繋がった対象に影響を及ぼす所謂類感呪術…釘を刺すのは痛めつけるための他にも『釘を刺す』所謂固定する為の意味も込めたダブルニーミングなのだろう。


単純で有るが故に応用性の高いこの呪術を鈴木蓮は好んでいた。


もう一つ『降霊術』と呼ばれるモノが存在する。これも又『類感呪術』と同じ様に特定の要素キーワードを必要とする類なのだが『降霊術』にも幾つか種類があり一つが霊そのものを降ろす方法もう一つが自己に対して対象との類似点を下に共振により性質を模倣する方法…鈴木蓮は特に後者を好んでいた。


いい加減何が言いたいのかって?


…背後には魔法少女が倒れていた、腸に当たる部分がはみ出ている辺り死ぬだろう…まあ多分私の所為だが。


「…生きたいか?」


白々しく聞く。


「…ぅ、ぁ…生き…た、ぃ…」


顔は下を向いて眼は霞んで見えてないのだろう、それを見て俺は…少し楽しく成りながら鞄から取り出した『奇妙な物体』を口に突っ込んだ。


「死にたくなかったら飲め」


それは両腕をクロスさせ螺子で縫い留めた人形に切られた紙だった…良く見れば紙に『血塗られた舌』と書かれているのが見えるかもしれない。


「…うっ…がっ…ふ、」


魔法少女は一瞬異物を突っ込まれた感覚に噎せかけるも執念か渇望か必死に『それ』を飲み込んだ。


処で、魔術詠唱や魔法陣は効果だったり特徴だったりが書いてある訳だが、言ってしまえばあれらは担い手の不足を補う為に有るわけだ、暗算が出来れば電卓は要らない、但し有ったほうが楽…道理である。


魔術呪術問わず『真名まな』は強い力を持ち知識は多ければ多い程影響を保つ、ならば、そう、例えばクトゥルフ神話知識知るべきでは無い情報群をルルブだとか資料集データブックだとかリプレイだとかで識っていて転生で持ち越ししてしまった奴がいるなら…吾輩そいつが適当に調べた魔術でも『魔術由来の一品アーティファクト』を造れる訳だ。


何せ執念恨みと藁と釘が有れば誰だった人を呪えるのだから。



震えていた魔法少女が徐々に白く『螺子曲がり』膨張し何処か軽重な音を経てながら形を変えいく。

紅く赤く触手めいた巨大な頭犬や猫の如き四足体型で某を見下ろす三日月めいた口を開く怪物…かの無貌の神の化身が一つ【血塗られた舌】


飽く迄【廉価版アイテム一貌いちぼう仮面ペルソナ・Bloody Tongue】を使って変身しただけの模造品本家が黒いの対して白い肌を持ち放たれる威圧感も精々『二級エリート魔術師キャスター』の上澄み程度…量産可能な事を考えれば上出来と言ったところか。


「A゛a゛a゛a゛A゛A゛A゛a゛A゛a゛a゛a゛a゛a゛!!!!」


薄暗くなって来た帰宅路で『月に吠える』それを背後に己は家に帰った。





Tips.「鈴木蓮」

転生者…

一般モブであり特段選ばれた血統だとか宿命とか運命は持たない。


前世知識の所為で色々と知り過ぎており、永久的発狂の結果、キャンペーンシナリオのアーチ・エネミー的存在とかした、実は既に何回か世界を滅ぼしかけてる…つーか量産型劣化化身とか普通世界滅亡案件である…何だこいつ?


魔術屋としての通名は『改造屋 チート・モット』

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