8

六時限目が終わった後、直ぐにHRも終わると、帰り支度を済ませて帰ろうとした。

その矢先、背中を叩かれて思わず振り返ると、彼が僕を呼び止めた。


「ゆ、夕凪くん…!?」

「朝比奈~ちょっといいか!」

「な、な、何?」


笑顔で僕に話掛けてくる彼に驚きながらも話を聞くと、彼は鞄の中から何かを取り出した。

其方に視線を向けると、それは見覚えのあるものだった。


「あっ……そ、それは」

「ジャーン!また俺も借りてきた!!」


彼が目の前に掲げたそれは、僕が昼休みに返却したあの催眠術の本だった。


「でさぁ、朝比奈にお願いがあんだけど~」

「えっ、な……」


『何を』と告げようとした時、彼が僕の目を見つめて指を鳴らした。


「───次は、お前が掛けられる番なっ……!」



パチン。

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