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次の日、クラスメイトは騒然としていた。
あの根暗な僕とあの人気者の夕凪くんが、一緒に登校していたからだ。
それだけでは無い。
今日は朝からずっと一緒にいる。
休み時間や移動教室、何かある度に共に行動した。
その異様な雰囲気に、女子は悲鳴に似た声を上げて、男達は驚きの顔を隠せずに響めいている。
「ヤだぁ……なんで夕凪くんが朝比奈なんかと~!?」
「マジかよ夕凪~!今朝待ち合わせに来なかったと思ったら……」
「アイツらあんなに仲良かったか?」
「夕凪くん離れなよ~!!」
クラスメイトが何度か夕凪くんを僕から離そうと試みたが、彼は何をしても動じず、僕から離れなようとはしない。
ぎゃあぎゃあと外野の声が煩い教室で、僕は一人、夕凪くんを隣に置きながら、優越感に浸っていた。
〈ざまぁみろ。僕と夕凪くんを引き離した罰だっ!!〉
授業が終わり、帰り際、虚ろな瞳で僕を見つめる彼の肩を二回叩いて耳元で囁いた。
「もう、いいよ!今日は有難う夕凪くん」
最後にもう一回肩を叩くと、彼はハッとして正気を保つ。
「あれ、俺…朝比奈!?」
「───夕凪くん!」
彼から離れて廊下に出ると、それを見計らって皆は彼へと駆け寄った。
「夕凪、珍しいなぁ……。お前がアイツと一日中一緒にいるなんて」
「どうしたの~夕凪くん。何かあったの?」
「えっ、、いや、別に……」
皆が皆、彼にアレやコレやを聞き出すなか、僕は廊下で彼らの様子を伺う。
“断続的に催眠術を掛ける方法”
昨日見ていた本のページに書かれていた。
『合図をきっかけに』断続的に催眠術を掛ける事が出来ると……。
例えば合言葉だったり、行動などで催眠術を掛ける方法だ。
僕は、彼の肩を叩く事で彼に命令を聞かせた。
本曰く、“三回”繰り返す方が効き目があると書いていあったので、二回叩いてから命令をし、三回目で催眠術を掛けたり解いたりするようにした。
廊下に響いてくるクラスメイトの声に含み笑いをし、僕は教室を後にした。
今日はいつもより長く一緒にいられたから、放課後は解放してあげた。
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