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今日の放課後もまた、夕凪くんを呼び止めて催眠術を掛けていた。
「ゆ、ゆ、夕凪くん。僕の事、す、す、好きだよ、ね!」
「はい……」
虚ろな瞳で僕を見つめる夕凪くんを見下ろして、僕は高揚感に絆されていた。
〈あぁ、やっぱり彼に好きだって言われるのは最高だ……〉
僕にも優しい夕凪くん。
皆から好かれる夕凪くん。
格好良くて優しい夕凪くん。
「さぁて、今日は何をしようかなぁ……?」
椅子に座る彼の太股に『失礼します』と跨がると、普段余り見られない彼の顔をマジマジと見つめる。
顔が整っていて掘りが深く、髪は薄い茶褐色の短髪なのに、サラサラしている。
目は切れ長で鋭いのに、話せば柔らかい笑顔を見せてくれる。
「コレじゃあ、誰からも好かれるよね……イケメンだもの。僕の顔なんて、前髪で隠さないと酷いくらいのヤバさだからなぁ……」
と、嘆きながら自身の前髪を指で摘まんだ。
まぁ、比べるのも烏滸がましいが……。
そんな憧れの彼を見つづけていると、不意に今朝の出来事を思い出した。
クラスメイトに引き離された夕凪くん。
まるで僕を邪魔者扱いする様に……あれは不愉快だった。
「アイツら、今朝はよくも夕凪くんと僕を引き離してくれたな……クソッ」
思い出せば思い出すほど、頭にくるクラスメイトだ。
僕は愚痴りながら、あることを思い付いた。
「そうだ……、あの催眠術を使おう!!」
今朝、目を通していた催眠術の方法を思い出し、早速実践することにした。
「夕凪くん。キミは僕が好きだよね?」
「はい……」
目の前で何も知らない夕凪くんに笑い掛けて、僕は明日に楽しみを膨らませた。
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