第3話 エロリスト


 チトマス先生のEカップブラを装着した私は、もはや無敵状態で、一気に大人の女性へとレベルアップを果たしたような錯覚に陥った。


「オォォ……も、もう我慢できません。背徳感に苛まれますが、今はむしろ……それが一層感情を昂らせ、私をヤバくさせるウゥゥ〜!」


 舞台女優のような独白が更に興奮度を高め、息がしだいに荒くなってくるのを感じる。


『先生、いけない仔猫ちゃんを、どうか許して下さい〜!』


 そう心の中で叫ぶが早いか、制服のプリーツスカートの横にあるファスナーを一気に降ろし、重力でフワリと足元に落とす。すると、エリンギ柄ショーツ丸出しの、艶姿なアマクリンがそこにいた。


「い、いよいよ至高の存在にアクセスする時が……」


 なぜか上アダルトブラ・下キュートパンツのちぐはぐさが許せなくなった私は、ショーツの両サイドに親指を挿し入れて、スルスルと下にずらし始めたのだ。

 学生感溢れるムチムチ、スベスベ、ツルツルな太ももを伸縮性豊かなエリンギPが通過した瞬間、右足を抜く。そして腰を捩り、まだ左足首に引っかかっているPを、つま先でヒョイと脱いだスカートの上に乗っけた。


「安心して下さい……はいてませんよ」


 禁忌を犯す痺れるような快感に酔いしれた私は、ついにチトマス先生の恥ずかしいアイテム・ランジェリーショーツを両手でゲットした。


「さあ、先生! 私と一体化して、ひとつになりましょうや?」


 迷いなく下から両足首を通し、膝上まで1センチずつ引っ張り上げるごとに全身の毛穴という毛穴が粟立ち、経験した事もないような甘美な刺激が、下腹部を中心にマグマのごとく湧き起こってくる。


「ふわあああ! うふふふ! うふふふ〜、こりゃあ、たまりませんなぁ!」


 ランジェリーが内股をなぞって私ににじり寄ってくるたびに、ビクッと立っていられないほどの心地よい痙攣が私を襲う。


『先生……私、濡れてしまいました……もうビショビショです……嬉し涙で……!』


 ただ単に弄んでいるだけで、これほどの快楽だ。ましてや先生の秘められた白いクロッチ部分と、私の一部が濃厚接触した際には、想像を絶するほどの高揚感を迎えるコトだろう。


「ハアハア、ハア……脱ぎたての体温がまだ感じられそう……と、とりかえばや……!」

 

 やがては結ばれた。欲望を貪る獣と化したアマクリンは、チトマス先生のパンツを一息で引っ張り上げて、骨盤と恥骨の虜にしてしまったのだ。


「こ、これは、何という不道徳インモラル〜! 嗚呼! 自然と身体がよじれてしまう〜!」


 その満たされし征服欲と下半身を貫かれるような幸福感に溺れた私は、生まれ初めて知る事となる夢のような絶頂の渦と感情の嵐に、思わずのけ反って身悶えするのだ。


「ああああああああああああアアア〜っ! チトマスせんせええええええええええええ〜!」





「――オイ! 何やってんだ……お前?」


「みやああああああああああああっ! チ、チトマス先生ッ? どうしてココに?」


「どうしたも何も、授業を終えて着替えに来たんだよ! それより……お前……何で私の下着に着替えてんだ?」


「いえ! コレには深いワケが……!」


 競泳水着スタイルの先生は、青ざめて引きまくり……いや、どこか浅瀬に打ち上げられた不可解な深海生物を見るような憐れみと衝撃、かと思えば鬼のような表情。チトマス先生の抱く複雑な感情が、ヒリつく空気を通して痛いほどに伝わってくる。


「そうか……! 朝トイレに行った時、間に合わず汚してしまったんだな。だったら保健室の先生に頼めばよかったのに。下着の替えなら、そこで借りられるはずだ。わざわざ私のはき古した物を選ぶなんて……気持ち悪くないのか? 変な奴だなァ、お前は……」


「は……ははは……そうでしょうか……」


 このどうしょうもない状況を切り抜けるには、うまく誤魔化すしかなかった。

 先生も更衣室に忍び込んだ教え子が、自分のランジェリーを上下とも拝借してロッカー前でニヤニヤしているという信じ難い光景を、どう理解して飲み込めばいいのか困惑しているようにも見えた。


「…………って先生を騙せると思ったか? 何が『うふふふ〜、こりゃあ、たまりませんなぁ!』だ! 全部、余す事なく聞こえてきたわ! お前は中年の変態オヤジか、いや変態の美少女か? 今日から君の事を変態女子アマクリンと呼ばせて貰うぞ!」


「ひょえええ! そ、それだけは、ご勘弁を~!」


「それよりアマクリン! いつまで私の下着でいるつもりだ? さっさと返せよ! この変態女子!」


「せ、洗濯してお返ししますぅ~!」


「その間、私にノーパン・ノーブラで授業させるつもりなのか?」


「それは萌えるシチュエーション……いやいや! 私のを差し上げますから」


「そんなモン、いらんわ!」





 ――こうして私は、愛するひとから変態という不名誉な称号を頂いたのであった。

 無理もないだろう。誠に私らしくなく、軽率かつ迂闊な行動であった。

 それでも他言無用で、教室の皆に黙っていてくれただけでも感謝せねば……。



                                   

   シン・変態女子アマクリン につづく


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変態女子アマクリン 印朱 凜 @meizin39

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