第14話
間もなくして、目的の心療内科に到着した。
受付けを済ませ、待合室の椅子に座り、暫くすると血圧を測りましょうと看護師さんに呼ばれた。血圧測定が済み、待合室の椅子に戻り診察の順番を待った。そこでも“おかしなこと”は起こった。ついさっき血圧を測った腕が、もう血圧計を外しているのに、また締め付けられている感覚がしたのだ。それも、必要以上の締め付けで、痛みを感じた。
助けを求める様に周囲を見回すが、看護師さんは奥の部屋にいて姿は見えず、他の患者さん達も、雑誌に集中しているようだった。その時、診察室のドアが開き、ドクターが出てきた。その顔は、私の記憶にある穏やかな先生の顔とはほど遠い、怒りの形相をしていた。真っ赤な顔に、充血した眼。浮き出た血管。それを見て私は、思った。血圧計も怒っていたんだ・・・と。その瞬間、締め付けられていた腕の痛みは消えた。
先生も、トイレに入り出てきた時には、普通の表情になっていた。しかし、以前受診していた頃を振り返ると、薬の内服も定期受診も自己判断で中断していたのを思い出した。
「よくも又、恥ずかしげもなくココに顔を出せたな」というのが、先生の怒りの理由の気がした。ココに頼ってはいけない。そう感じてしまった私は、今年に入って始まった“おかしなこと”たちを、先生に話すことは無かった。何を話したかは覚えていない、いや、何も話せなかったんだっただろうか。職場に提出する診断書を受け取り、帰路につきながら、「病院も安心出来る場所ではない。怖い場所だ。」という概念が、私の頭の中に植え付けられていたのだった。
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