第3話

その日、私は処置室の担当になった。処置室では具合が悪く診察までベッドで休む人のケアをしたり、点滴や吸入などの処置を行う。なので新しい受付機の案内に携わる事は殆どなかった。しかし、処置を行う場合にも、電子カルテ化のシステム移行で、処置の手順を踏んでパソコンに入力する際、指紋認証が必要となっていた。指紋は事前に登録してありセンサーで照合するのだが、何をするにも指紋認証及びパソコン入力が必要で、慣れないその作業に追われ、患者さん中心のはずが、パソコンの画面を観ている時間の方が長く、機械中心になっている感覚に二つ目の違和感を覚えた。


また、ふとした瞬間に指紋認証のセンサーが「眼」の形にも見え、パソコンがそこを入り口に情報を集め、いずれは病気の診断や治療方針を決めたりする時代が来るのではないだろうか?近い将来、画像診断はパソコンで見る事が出来る準備は進んでいるが、もし画像や、血液などの検査結果が取り違えられたら、間違った手術をされたりしてしまうのではないか?はたまた、指紋認証をしないとアクセスできないコンピューターを狙って、襲われて指を切断される事件が起こるのではないか?など、ゲームや映画の世界に出てくるようなイメージまで頭に浮かんだ。何より、コンピューター中心になるのが怖かった。


しかし、幸いなことに同じ部署で働く先輩は、常に問題意識を持ち、時に患者さん、時にスタッフが利用しやすい場に改善していこうという、人対人の関わりを大切にし、実践している人達だった。今まで、見て来たその背中は、進むべき道しるべに感じられ、安心と心強さを得られたのだった。

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