第18話 神臓対策局ミズガルズ② ユグドラシル
世界最大の大地、グラマティクス大陸。かつては豊かな自然に覆われた地であったと言われているが、現在、その面影は微少だ。人が居住している都市部周辺以外の大部分が赤茶けた荒れ地となっている。
五百年前の神滅戦争、ラグナロクの影響だ。神々の力か、人類側が使用した超兵器の影響かは定かではないが五百年の時が立った今も、傷跡は癒えることなく大地に刻み込まれている。
だが例外として、傷が癒され、多くの緑が育まれている唯一の土地がある。
世界樹ユグドラシル。全長十キロを優に超える、世界の始まりより前から生き続けているとも言われる超巨大な樹木。その周囲はラグナロクの傷跡が消えさり、健康的な大地が蘇っている。
そして、そこには世界樹と同じ名を持つ都市がある。
世界樹の周囲を囲むように広がる都市。グラマティクス大陸の三分の二を統治する世界樹同盟政府、その首都ユグドラシルである。円形に広がる都市は内側、つまり世界樹に近い場所に政府関係施設が多く集中し、外縁は商業地区や居住区という都市構造をしている。
そんな都市構造を無視し外縁、街から少しはなれた場所に神臓対策局ミズガルズの本部建物は建っている。
そして、ミズガルズ本部最上階の局長室兼特務班室では、情報提供者であるノクターンを交えて、ドラウグ級重犯罪者であるフェーデ・アドヴェントへの対応を検討する会議が行われていた!
「ふ、ふああ、脳が蕩ける~」
ミズガルズの最高責任者たるラーナ・F・レイヤーは、白目をむいてビクンビクンと痙攣していた。
「局長、いけません! はしたない顔になっています! お気を確かに!」
フラムは、ケーキを食べた多幸感から痙攣し、トリップするラーナを現実に引き戻すために肩を揺すった。
「つ、疲れた脳に、染みわたる糖分……あ、あひぃ……」
「なんてことだ……せっかくジャージからスーツに着替えさしたのに……ああ、いけません、スーツが汚れます!! 現実に戻ってください、局長!!」
その光景を見ながらエルドは、買ってきたケーキを口に運ぶ。
「む、これは確かに! さすがミズガルズが誇る甘党、レゾンさんがおすすめすることはありますね!!」
そうだろうそうだろうと言いながら、やたらと派手なシャツを着たサングラスの男がケーキを頬張った。
「うめえ、うめえよ……この為に俺は今日まで生きて来たんだ……」
「あ、コーヒー、お代わりいる人いますかー」
「エルド殿、私が」
「いえ、フラムさんは局長を現実に引き戻すのに専念してください」
「うう、かたじけない」
ケーキを食べながら、ノクターンは思った。
これ、会議か?
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