第17話 神臓対策局ミズガルズ① 教えて!ハツ太郎くん!

 3!!!

 2!!

 1!

 どっかーん! という文字と共に、画面全体を揺るがす大爆発が起こる。軽快な音楽とともに、タイトルが大写しになった。

 「教えて! ハツ太郎くん!」

 タイトルのテロップが消えると、やけにリアルな心臓にデフォルメされた顔と手足が付いた着ぐるみが現れた。

「良い子のみんな! 僕はハツ太郎! 心臓の妖精だよ! このコーナーでは、みんなからの質問にコンプライアンスと法令を遵守しながら答えるよ!! 質問に解答するのは、もちろん、僕、ハツ太郎と……」

 再び、轟音を上げて爆発する画面。炎の中から、顔がハートマークになっている軍人の着ぐるみが登場した。

「サー! イエッサー! 心臓マン軍曹であります!」

「では早速、最初の質問のお便りだ、軍曹!」

「サー! イエッサー! ユグドラシル大学付属小学校のアルベルト(仮名)君からの質問であります!!」


「神臓対策局ミズガルズって、どんなお仕事をしているんですか?」


「アルベルト君、ありがとう! いい質問だね」

「サー! イエッサー! この質問への解答は、ミズガルズ機密保持条例に抵触する危険性があります!!!」

「そっかー! 残念だけど、この質問には答えられないなあ!! じゃあ、次の質問に行こうか、軍曹!」

「サー! イエッサー! ドラクロワ在住のアンジェリカ(仮称)さんからの質問であります!!」


「結局、ラグナロク・ハートってなんなの?」


「アンジェリカさん、良い質問ありがとう!」

「サー! イエッサー! この質問への解答は、セキュリティレベル5により解答不可であります!!」

「ざんね~ん!! またの質問をお待ちしているよ!!」


 画面下に許可します、というテロップが出る。

「ううん? 許可しますって言われてるねえ!!」

「サー! イエッサー!! 超法規的措置であります!」

「わー! すごーい!! じゃあ、アルベルト君の質問から答えるよ!」


「神臓対策局ミズガルズはラグナロク・ハートの調査と研究、また近年増大するラグナロク・ハートが関係する事案への対応を主な業務とする、世界樹同盟政府・評議会直轄の機関です。ユグドラシルに本部を置き、他、グラマティクス大陸三か所に支局を置いています」


「サー! イエッサー! つづいて、アンジェリカさんの質問への解答であります!!」


「ラグナロク・ハート、またハートホルダーが確認されて約百年が経過した現在においても、ラグナロク・ハートはまだまだ謎の多い臓器と言わざる得ません。なぜ、五百年前のラグナロク時に滅びた神の力を行使できるのかについても諸説あります。空気中には、滅びた神々の肉体は神素と呼ばれる粒子と化し残留しており、ラグナロク・ハートは、体内に取り込まれた神素を能力発現のエネルギー源としているということが能力発動のプロセスとして判明しています」


「みんな、わかったかな!!」

「サー! イエッサー!!」

「じゃあ、また会える日を楽しみにしているよ!!」

「サー! イエッサー!!」

「ばいばーい」


 軽快な音楽と共に、提供:ミズガルズ広報課の文字が映し出された。

 カット!! お疲れさまでした!! という声が響いた。


「いやあ、ありがとうございます、ノクさん!」

 ハツ太郎の着ぐるみを取り外しながら、エルドは言った。

「広報課から着ぐるみのスーツアクターを頼まれていたのをすっかり忘れてて! しかも軍曹役のスーツアクターが急な出張で不在とは!! 代役していただきありがとうございます!」

 心臓マン軍曹は無言でたたずんでいる。

「ノ、ノクさん? もしかして、怒ってますか……?」

 心臓マン軍曹はエルドを無視して、踵を返し、更衣室へと向かった。

「ノ、ノクさん、ちょっと!? 急なお願いで、本当、すみませんでした! 着ぐるみも大変お上手でしたよ!!」

 心臓マン軍曹は無言で一瞬、エルドを振り返る。

「ぴっ!?」

 着ぐるみから放たれた怒気にエルドは後ずさった。

「こここ、この後、ミズガルズの局長室へご、ごご案内しますので、ききき、着替えられましたら、ろろろ、ロビーまでお越しください……」

「……サー、イエッサー……」

 心臓マン軍曹はこくりと頷き、荒々しく更衣室の扉を閉めた……。








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