第12話 Café GRENDEL② 姉妹
エルドの言葉を聞き、立ち去ろうとしたノクターンの足が止まった。
「……条件はありますけど、ね」
「条件?」
聞き返し、ノクターンは再び席についた。
「条件は二つ、です」
エルドは指を二本立てて、言った。
「一つは、教授の元へ行く前に一緒にユグドラシルへ来てください。ああ、もちろんそこで逮捕したり、身柄を拘束したりは絶対にしません」
非常に重要な任務があるんです、とエルドは言った。
「任務?」
「上司から直々の最重要任務です。これに関しては、いかなる状況にあっても遂行しなければいけません。本当に、とんでもないことになります」
エルドの真剣な表情を見て、ノクターンは、余程の任務なのだろう、納得して首肯した。
もう一つは、とエルドが続けて言った。
「ノクさんが教授と交わした契約の内容を教えてください。ノクさんは、私を教授の元に連れていったら、何を得ますか?」
「契約……か」
そう呟いてから、うん? とノクターンは首を傾げた。
「ノクさん?」
エルドは、頷いた。
「ええ、ノクターンさんを略して、ノクさんです」
「……なんで、お前にそんなに親し気な名前で呼ばれなくちゃいけないんだ」
「じゃあ、ノクたん、にしますか?」
「……もう言い。好きに呼べ」
ノクターンはため息をつき、席から見える広場に目を向けた。広場を歩いていく親子が、目に留まった。両親の周囲で、二人の女の子がはしゃいでいる。
姉妹。
「……リゼンハイム、お前、兄弟はいるか?」
「いえ」
「私には、姉がいた」
ノクターンは、広場の姉妹を見ながら言った。
「私は、姉の心臓を探しているんだ」
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