第40話

 私はきっとおかしい。見舞いにすら行かない。どうかしてる。

「見にいかなくて良かったんですか」

 その問いに真っ当な答えを私は知らない。戻ってきて発された彼の問い。

「別にどうでもいい。どうだった?」

「聞くなら見舞いに行けばよかったでしょ」

 そう言えば彼と一緒に見舞いに医療棟へ行った先輩はまだ帰ってきてないな。

「ただの世間話で聞いただけ。興味ない」

 時間が流れていくばかり、まだ戻って来ない。

「大丈夫ですか、亡くなった人欄先輩の後輩ですよね」

「そうだね、だけど人が死ぬことなんて私はどうでもいい」

「大丈夫な人なんていないです。欄先輩しばらく休んだ方が」

「馬鹿だねきみ。人殺し相手に言うことがそれ?」

 笑いがこみ上げそうだった。

「欄先輩は人殺しじゃないです」

「犯人を殺したんだから人殺しだし殺人だ。生きたまま捕らえることも出来たのに、殺したんだから」

「殺したら人殺しなんて暴論です、仕方なかったならそれは殺人じゃない」

「言ってること支離滅裂、きみどうかしてる」

 私の言葉より志野くんの方が暴論だろ。私はそう思う。

「それに私は吉岡くんを本当は助ける方法があったのに、別の事を優先した。もし吉岡くんを助ける方法を優先してたら今頃生きていたろう」

「そんなものは無いんでしょ」

「ううん、あったよ。あった。使わなかっただけ」

 そんな表情をきみもするんだななんて私はどうでもいいことを思った。だからか口走ってしまったのは

「反魂って知ってる?」

「死んだ人を生き返らせる術ってことなら知ってます」 

「まぁそういう意味では厳密には反魂とは違うんだけど、使えば死ななかった」

 そう死者をよみがえらせるという定義においては反魂とは違うことになるが。それを使っていれば死ぬことは無かった。

「無いでしょそんなのは空想だ」

 そう思うのは仕方ない。私は外を眺める。

「疑り深いな。実践した方がわかりやすいかもね」

 外を眺めるちょうど死にかけの生物がいた。迷わずそこへ車から出て近づく。志野くんは後ろからついてきている。

「厳密には違うって言ったのは。死者をよみがえらせるという定義には当てはまらないから」

 それに屈んで近づく。手のひらに乗せると息を吹き込むようにそっとそして力強く息を吹きかける。先ほどまでの弱々しい気配とは打ってかわり元気になっている。

「ねっ、これでわかってくれた?」

「マジックとか医術とかでしょ」

「違うよ、信じないなら信じないで構わないけど」

 視線を1度だけ彼に向けると車内へと私は戻る。どうせ信じなくたっていい。私自身がよくわかっているけれど、今はそれを、実例を、証明に利用したくない、それは死者を冒涜することになる。そんなのはしたくない。


 それから間もなく戻って来た先輩が私を睨む、きっとしたことがバレたんだろ。罰の悪さ、居心地の悪さを無視。


 先輩の運転で車は走り出した。最悪な空気が車内に。

 

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