第37話
「こんなの来てますけど」
と、言ったのは辻本さん。支部名義の封書。
中身は、呪い代行サービスによる被害の増加。というもの。要するにどうにかしろという話。
少し前から増えていた問題のひとつ。
「これってさ、物理的に相手殺してもいいの?」
その方が手っ取り早い気がしたから。
「いいとでも? 普通に考えて殺人なんぞ誰が許可するか」
ネット上、となると単独か複数なのかによっては突き止めるのめんどくさいな。と私が考えたのは当たり前だろう。
まぁ、結局かりだされるはめになったわけで。どうせ本部のメディア部署から支部に回ってきた案件が押し付けられていることは容易く想像できる。
「使う側にも非があると思うんだよね」
「それほど思いつめて藁にもすがりたかったとか?」
そんな甘ったれた言葉を言ったのは志野くんだ。
「別に呪い代行サービスの類いを使うこと自体を否定しているわけじゃない、ネット上のを利用したことが問題なんだよ」
「それが?」
「仕方ないから使うってのは結構。けどちゃんとした筋の人間ならね、でもネット上ってのはね当然当たり外れがあるしインチキや詐欺師もいる、わかる? リスクが大きい」
「ああ、なるほど。否定はしないんだ」
「とりあえず、もっとも被害報告の多かったやつを客を装って辻本さん達が誘き出してくれる手筈だし。出てきてからだけど。呪いがろくな結果招かないことはきみがよく知ってるだろうに、同情するなんて、お人好しなのか馬鹿なんだかよくわからない」
ほんと。不思議で仕方ない
「痛いところ突いてくるなぁ、でも実際人間って何であろうと頼りたくなるのは
それが原因で彼の家は壊滅したのに、ほんと理解できない。単なる馬鹿なのか。できた人間なのか。
ディスプレイには誘き出せた旨がメールによって知らされる。
ふと視線が向けられる。
「なに?」
「ところで前回もそうですけど、その服装何なんですか?」
こちらを指さして彼は言う。
「好き好んで着てるわけじゃない、ほっといてくれ」
事実、好き好んで着てるわけじゃない。仕方ないだけ。理由を説明する気にもならない。
相手のおおよその位置がメールに記載されて来る。
「お喋りはおしまい。さあさあ仕事の時間だ」
私は車を出て伸びをする。
「ぼくはなにを?」
「取り逃がすわけにいかないからね、その時は教えて相手の位置を」
「あのビルの屋上がちょうどいいかも。行こう志野くん」
「どっから上がるつもり?」
「あの外階段だよ」
他の人員もあちこちに配置済み。逃げられては困る。警察ごときがあんなのを捕まえたとて裁けない。どうせうちの本部に連行するのだろう。
「ああ、そうだ。他の人にはもう渡してだけどきみに渡すの忘れるところだった」
「何なんですか、これ」
「見ての通り、護符だよ。せいぜい一回が限度。きみが怪異からの悪影響受けないとは言っても厳密には怪異汚染の悪影響であって、呪いは受けたら無事では済まないだろうから」
「物騒です」
「たぶん向こうはさ、いざとなったら使ってくるよ。人数分用意してもらうのがやっとだったから一度が限界。二度目はないからその時は位置情報なんていいから逃げな? 他の人もあちこちで待機してくれてるしなんとかするから」
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