第29話
「さておさらいといこうか、歩きながらにはなるけれど。ここではそれがまつられた頃儀式としていくつか取り入れられたことがあってね。今から向かう場所もそのために使われることになった設備でありもはや信仰の対象にさえなってしまったものなわけ」
「それを普段はそこに保管し来るべき祭りの日には選ばれた大人二人と子供二人それぞれ男女1人ずつがおこもりしたり、その祭りの時使われたそれは生き返らせたい家族の元へ特定の日にだけ返され家族として迎え入れたり、とまぁ特殊なことに使われるはめになったりしたわけだけど元々は山の神をまつるために男衆が幾人かがおこもりするための施設を転用した。要するに古いから物理的に危険なんだよね現在」
「でもそれを処理する必要あるんっすか?」
後ろからの声に頷く。
「まぁほんとは必要ない気もするんだけどね。ところでその後まだ廃村にはなってたのかなってなかったのかそれくらいの時期に良くある話再び禁足の地になった後に若者が遊び半分の気軽な気持ちで侵入を果たして呪われたという旨の顛末まで記載されていたわけ」
「でももう人はながらく踏み入れていないですよね、律先輩」
辻本さんの疑問は当然だろう。私自身そう考え放置した。
「そう。けれど。国が再びこの土地を起こさないとは限らない。それにより再び活性化するリスクという理由と。これらをすべて悪意によって綴じた人間がいるという問題がある。それらは本来別々の人間が体験の記録や風習の記録として残されていたようなんだけど、最終的にそれを拡散させようという意図をもった人間が一冊にまとめ直したようなんだよね、こっちが処理しておくべき理由」
「でも破棄したんだよね」
志野くんの声がやけに通る。
「そう破棄した、私が。ところでこの書類一体誰がどのような経緯で手に入れ書庫に格納されたんだろうって考えた。もしかすると内部にいたのかもね所詮憶測に過ぎないわけで、たまたま手に入り格納されていたのかも。どちらにせよ当人が生きている確証も無いが死んだという確証も無いんだよね。元凶つまりこの場合土地や施設を機能出来ないようにしておくべきだと思ったってのが今回の理由、わかった?」
元々は舗装されていたのだろうな、けれど。打ち捨てられて人の手が入らないこの場所は歩きづらい階段もぼろぼろだ。左手に曲がるこの道(正確には道の名残だろうか)が目的地への唯一の道。足場は不安定で木々は鬱蒼としげる人ひとり程の幅だ。左の小道が曲がると無機質なコンクリートの建物の骸が見えた。これが対象だ。既に扉は残っていない。大きな口を開け待っていると言えるだろう。
崩れずによくもまあ残っていたものだな。入って崩れたらそれこそ人なぞ簡単に押し潰されおしまいだ。中に入らなければ肝心の物には近づけないわけだけども。
「あれだよ」
指をさして少し拓けたところにズレて後ろの二人に。
「いつ潰れてもおかしくはありませんね」
「ぼろぼろだ」
と言う二人の声に苦笑した。
「さすがに中に入るにしても二人までだね。万が一1人だけは生きててもらわないと後が困るからということで、辻本さん」
「はい」
威勢が良いっていいよなぁ。後ろの二人へ向き直る。
「中々戻って来なかったら死んだと判断して車まで逃げ帰ってね。万が一は無いと思うんだけど」
こくこくと頷くのを良しとして。
「さて中に同行してもらうわけだけどね。志野くんも何か崩れそうになったりとかしたら急いで逃げ帰ってね」
鞄は下ろすこれを持っているといざというとき。逃げるのが遅れるだろうから。それにどの重さまでならあの建物の床は耐えられるかわかったものではないから。
せいぜい持てるものは携帯と懐中電灯だけか。後は頑張ってもペットボトルと塩とかくらいか。
御札の類いは返したからもう手元にはない。そもそもあれ、誰でも使えるよう普及品にするための試作品かつチューニング目的なモノ。
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