第24話
自販機とベンチぐらいしかここにはない。私は諭される形で連れられて座っている。
「少しは落ち着いたか?」
「⋯⋯⋯⋯」
頭がボーッとする。私は壁にもたれ椅子に座っているんだと思う。
「頑張りすぎなんだよ、欄は」
真横で先輩の声がする。
「そんなことないです」
足下を見ながらそう言った。
「自分が限界だ、もう疲れたって。知覚できないんだろなお前はさ」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから気づいた時には一気に限界が来てんだろ」
「そうですかね?」
あんなに泣いて騒いで困らせて私は幼稚だ。
「ああ、きっとなあ。志野のこと気にかけてくれてたんだってな」
「そんなはずない、です。私は酷い仕打ちをしたし傷つけましたから」
だから失望されて当然。暴力にさらされるのも当然。自業自得なんだよ、と。私は
「こんなこと言ってもたぶん欄は受け入れないだろけど、上の人達も凄く心配してる。もちろん俺も福呂もお前んとこの後輩達も」
「周りからも嫌われてます、もちろん私自身も私を嫌いです。だからそんな嘘要らないです」
何故私は人の言葉をちゃんと受け入れられないのだろう。
「それは一部の人間だ。ちゃんとお前のことを理解してるやつは嫌ってなんかねぇよ」
「⋯⋯」
「酷い話だよな。逆恨みもいいとこだ会議の時の奴さ、たぶんあいつ辞めることになると思う」
「恨まれて当然のことを私がたぶんしたんです。あの人が悪いわけじゃない、辞めさせるなんて」
「いいやあいつが悪い。お前じゃない、庇うな! 責任なんか感じるな! 自分が苦しくなるだけだ」
強く先輩がそう言った。
「悲しいなら悲しめ、泣きたきゃ泣けばいい。苦しかったら誰でもいいから助けを求めろ。全部独りで受け止め無くたっていいんだよ」
「俺んとこの事務所お前も来い。場所は新設予定地に移るかもだけど。福呂も来て胡内と吉岡のことを見てくれてる。それから田口。んで、志野と空蝉もなあ居る。お前は知らんだろうけどあとふたり。全部独りで頑張らなきゃいけない今より俺はその方が良いと思う、上も同意してくれてる」
「尚更、無理です。私には」
「他人には頼れないか? 頼りないか?」
逡巡して
「自信がない、んです」
「じゃあ命令だ。来い、断るのは認めない」
久しぶりに先輩の満面の笑顔を見た。
「まぁ、それはおいおいとして。送ってくよ」
立ち上がってそう言った。
「そこまでしてもらわなくていいです」
ひとりで帰れるから、と。
「心配だからな、その状態でひとりで帰せない」
半ば無理やりそう言いきられて駐車場へとついていく。変わらず私の足どりはおぼつかない。
車に揺られ家の前まで。途中立ち寄ったコンビニで買ったらしい物を押し付けられて家へ帰った。冷蔵庫に中身を放り込む。
疲れからか暴力の余波からか意識を手放すように眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます